当然、人一倍仕事に対する取り組み姿勢が熱心であれば、それだけ能力が向上する確率は高まるだろうと考えるのは間違ってはいませんが、どれだけ最前列に座っても、そのことと仕事能力は必ずリンクするというものではありません。つまり、論理的な推論で結論を導き出せることでも、現実をきっちりと確認しておかなければ間違うこともあるということなのです。
「仕事ができないあいつがなぜ高い評価を得てるんだ?」というような場合は、この論理的誤謬を疑ってみてもいいかもしれません。
評価エラー(6) 「対比誤差」
人は自分自身を基準に相手との差を測り、その人の評価を決めることが往々にしてあります。たとえば、「私に比べたら、この部分は私と差がないから4だが、この部分はまだまだだから2だな」といった具合です。また、自分自身ではない第三者を基準に設定して、その人と比べた差で評価するという場合もあります。
このように、評価は本来、評価項目ごとに絶対評価で行われなければいけないのに、ある特定の人物との相対評価を行うことによってエラーを起こすのが対比誤差です。
この評価エラーはとても人間臭いものですが、同時に危険な判断も招きかねません。たとえば自分を基準に評価する上司であれば、自分と反対の特性を持つ部下の評価が低くなりやすい傾向にあるといえます。これは組織のバランスを欠くという意味でも致命的なエラーになりかねません。
また第三者を基準にして評価する場合には、その基準にトップ評価の人が選ばれてしまうと、他の被評価者は最初からトップになれないことが確定していまいます。それどころかトップを標準にして比べられるわけですから、マイナス評価の絶対値も最大になってしまいます。
ええかげん評価にストレスを溜める必要はない
ここまで主な6つの評価エラーについて、その実態を書いてきましたが、会社の人事評価がいかに”ええかげん”なものであるかをご理解いただけたのではないでしょうか。
誤解がないように申し上げておきますが、私は評価エラーに言及することで評価制度を否定しているわけではありません。あくまでも評価制度は必要なものと考えています。必要なものだからこそ、現実に行われている誤った評価方法から目を背けてはならないと考えているのです。
評価制度は必要という前提に立っても、この”ええかげんさ”が評価に対する不満を膨張させている大きな原因になっていることは憂うべき現実です。真面目に働いている人ほど、その不満は膨れあがりますし、その結果、仕事に対するモチベーションが下がってしまう人も多く出てくることでしょう。中にはストレスから心を病んでしまう人もいるはずです。