エラー(3) 「逆算評価(メイキング)」

 どんなに優れた人事評価制度であっても、評価者が「評価結果ありき」で採点してしまうと、評価制度そのものを否定することになってしまいますが、案外この逆算の誘惑に勝てないものです。

 たとえば部下が5人いた場合、ほとんどのマネジャーは人事評価基準に関係なく、総合イメージとして5人の相対順位をあらかじめ心の中で決めてしまっています。たとえば、「私の感覚ではB君、A君、E君、D君、C君の順だな」という具合にです。

 でも、評価項目をひとつずつ丁寧に採点していくと、その合計点が自分の中の順位と違ってしまう場合があります。そうなると評価者は作為的に自分が決めた通りの順番になるように点数を調整してしまうのです。「B君は一位だからこことここを加点しよう」「C君は最低点にしなければならないから、こことここを減点しよう」といった感じです。

 このエラーのやっかいなところは、評価者自身はあくまでも正当に評価しているつもりで点数の調整をしてしまうところです。つまり、自分の直感的な評価が各評価項目にしたがって評価した結果よりも正しいと思ってしまっているのです。

エラー(4) 「例外誇張評価(ハロー効果)」

 普段、厳しい人が一度でも優しいことをしたら、「普段は厳しい人だけど、根は優しい人なのかもしれませんね」と評してしまうことがよくあります。逆に、いつも優しい人が一度でも烈火のごとく怒り狂うと、「優しい、いい人に見えるけど、本性は違うのかもしれませんね」と評されてしまいます。

 このように普段と違う例外が出たときにそれを誇張してしまう癖を、実は誰もが持っています。私はこれを例外誇張評価と名付けています(専門書では、こうしたエラーをハロー効果と呼んでいるのですが、私はその言葉の印象がどうしても明るく感じられ、名が体をなしてないように思うので例外誇張評価と言い換えています)。

 たとえば、営業成績を評価する場合、年間成績が「達成度98%」の社員が2人いるとしましょう。一人はほぼ毎月98%平均、もう一人は毎月90%割れが多いのですが一月だけ200%超えを果たしているような場合、どうしても200%超えという目立った活躍をした社員のほうを総合的に高く評価したくなるものです。私がマネジャーとして部下を評価するときに最も苦心したのが、この例外誇張評価に陥らないようにするということでした。

エラー(5) 「論理的誤謬」

 誤謬(ごびゅう)という言葉は使い慣れない言葉ですが、意味は簡単で「間違い」のことです。つまり、論理的誤謬とは論理的に間違えるという意味になります。

 社員研修のときはいつも最前列に座り、熱心に耳を傾け、質問し、熱心にメモを取っている部下がいるとします。そこまでひたむきに仕事に打ち込んでいるのだから仕事能力も高いに「違いない」、と推論をして評価してしまうことがよくあります。