生活扶助引き下げに始まった生活保護費の引き下げを推進しようとする勢力は、とどまるところを知らない勢いである。2013年7月・2014年4月の生活扶助引き下げに引き続き、現在は住宅扶助その他の扶助に関する「引き下げありき」の検討が行われている。

現状、住宅扶助はどのような状況にあるのだろうか? 引き下げは、どのような人々の生活を、どのように変化させる可能性があるのだろうか? 影響を受けるのは、生活保護利用者たちだけだろうか?

来年度から住宅扶助は引き下げか
厚労省での緊急記者会見の中身

2014年7月9日、厚生労働記者会において開催された記者会見。稲葉剛氏のほか、生活保護を利用している障害者・支援者・不動産業者・法律家など多様な人々が発言を行った
Photo by Yoshiko Miwa

 2014年7月9日、厚労省内の「厚生労働記者会」において、生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに関する記者会見が開催された。また、この記者会見に先立つ6月14日、 生活保護問題対策全国会議・住まいの貧困に取り組むネットワークは、「生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する共同声明~「健康で文化的な最低限度の住生活」の基準を変更することは許されません~」を発表した。この共同声明には、現在までに218団体が賛同している。

 記者会見では最初に、稲葉剛(自立生活サポートセンターもやい理事、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人)氏が、政府・厚労省の動きと住宅扶助引き下げの問題点について解説した。

 本連載でも数回にわたって紹介したとおり、厚労省は2013年1月に発表した生活扶助引き下げ方針(2013年7月より段階的に実施)に続き、住宅扶助も引き下げる方針であるようだ。昨年秋から今年前半にかけ、社会保障審議会・生活保護基準部会(以下、基準部会)では、住宅扶助に関する議論が急ピッチで進められている。現在は、生活保護世帯の居住実態の調査が始まろうとしている段階だ。調査の詳細は、基準部会内に設けられた作業部会が決定する。作業部会で行われる議論や調査の内容は非公開だが、11月、調査結果を受け、基準部会での取りまとめが行われる予定である。

 基準部会で住宅扶助に関して現在行われている議論を、12月、来年度の予算編成に反映しようとすれば、11月には取りまとめを行う必要がある。このスケジュールを、稲葉氏は「拙速」と批判する。そして「来年度から、住宅扶助は引き下げになると思う」と危惧する。そして、基準部会での議論に際して厚労省が用意した資料を例として示し、「引き下げありき」に基づくミスリーディングや「引き下げていいんだ」という誘導の数々を指摘した。もちろん稲葉氏は、作業部会が行う調査と非公開の議論に対し、

「検証ができません。 結果が出てきた時には流れが決まっているということになるのではないでしょうか。これも問題です」

 と指摘した。

 むろん、問題は、決定プロセスに関する手続きだけではない。