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データサイエンティストの冒険

データサイエンティストの日常・その1

工藤卓哉 [アクセンチュア]
【第11回】 2014年7月15日
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ツイート分析が
学会調査と符合する驚き

 最優秀賞に輝いた長野県立屋代高校チームのテーマは「花粉症患者のつぶやきを社会の意思決定に活かしたい」というものでした。

 彼らがどんな分析を行ったのか、かいつまんで説明してみましょう。

 Twitterデータのなかには、体調にまつわるツイートが数多く含まれています。

 このコンテストに応募するにあたって彼らは、そうした体調に関連するツイートのなかから「花粉症」に着目。ツイートデータの分析を始めました。

 その結果、彼らは「くしゃみがひどい」と言うツイートが多い日の翌日にある傾向があることに気がつきます。

 それは「鼻づまり」の辛さを訴えるつぶやきが増えるという事実でした。

 彼らはその発見をベースに、男女で異なる反応の違いや、花粉の種類に影響の差異についても分析を進め、処方薬を性別で使い分けることや、スギやヒノキを分けた予報をすべきという提案を行ったのです。

 プレゼンも質疑応答での受け答えも素晴らしく、それだけで十分評価に値する内容だったのですが、驚くべき事実がまだありました。

 それは彼らが導いた結論と、以前、専門家が実施した花粉症調査で得られた結論とがほぼ同じだったという事実です。

 まさか専門家が行った調査とツイートデータを分析した高校生の研究が同じ結論にたどりつくとは思いもよりませんでした。まさに圧巻と言うほかない快挙です。

学生が示してくれた
データサイエンティストの理想像

 屋代高校チームが最優秀賞を受賞したのは、ユニークな着想とデータへのアプローチが評価されてのことは言うまでもありません。

 そのなかでもデータの中から見えざる事実を掴み出し、データに基づいて現実をよりよく変えうる可能性を的確に示した点が、高い評価を獲得した理由です。

 「当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、アナリティクスを生業とする者でさえ、ともするとこうした「当たり前」のことを忘れ、手段に過ぎないはずのツールや手法、もしくはデータそのものに翻弄されることがよくあります。

 いくら高度な知識や技術を持っていたとしても、「データ解析のためのデータ解析」には何の意味ありません。

 彼らは、データ解析の結果どんな成果を得たいのかを常に意識しながら、適切な手法と論理的思考によって答えに近づいていくという、データサイエンティストのあるべき姿を、非常にストレートな形でわたしたちに示してくれたわけです。

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工藤卓哉
[アクセンチュア]

Accenture Data Science Center of Excellence グローバル統括 兼
アクセンチュア アプライド・インテリジェンス マネジング・ディレクター
ARISE analytics Chief Science Officer (CSO)

慶應義塾大学を卒業しアクセンチュアに入社。コンサルタントとして活躍後、コロンビア大学国際公共政策大学院で学ぶため退職。同大学院で修士号を取得後、ブルームバーグ市長政権下のニューヨーク市で統計ディレクター職を歴任。在任中、カーネギーメロン工科大学情報技術科学大学院で修士号の取得も果たす。2011年にアクセンチュアに復職。 2016年11月より現職。 データサイエンスに関する数多くの著書、寄稿の執筆、講演活動を実施。


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近年テクノロジーと数理モデルによってもたらされるアナリティクスが、ビジネスを大きく変えようとしている。データの高度な活用から次の打ち手を見出す力、アナリティクスの決定的な優位性を最前線から解説する。

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