自分の「役割」は何か?

税所 篤快(さいしょ・あつよし) 五大陸ドラゴン桜e-Education project代表 1989年生まれ。東京都足立区出身。早稲田大学教育学部3年生。19歳でバングラデシュに渡り、グラミン銀行の研究ラボ「GCC」で初の日本人コーディネーターになる。20歳で独立し、バングラデシュ初の映像授業を実施する「e-Educationプロジェクト」をスタート。現地の大学生パートナーと協力して貧困地域の高校生を国内最高峰ダッカ大学に入学させる。現在は仲間と共に、世界各地でこの方式を広めようと奮闘中。2012年にはヨルダン、ルワンダ、パレスチナ、フィリピンでの活動を開始。 ◇主な著書 『前へ!前へ!前へ!』(木楽舎) 2011 『最高の教室を世界の果てまで届けよう』(飛鳥新社)

税所 あ、そうだ、僕、夏子さんに聞きたいことがあったんですよ! 

白木 何でもどうぞ(笑)。

税所前編で僕が立ち上げた団体の代表を交代したという話をしましたが、僕はどんどん新しい事業を切り拓いて、運営や経営は他の人に任せてしまうタイプなんです。夏子さんは、どういうリーダーシップをお持ちですか? 経営、広告塔、デザインなどマルチにされているなあ、と思っているんですが。

白木 ああ、これはリーダーシップというより経営者のタイプとしてですが、ブランドの創設者はマルチに、それこそデザインから広告塔まで何でも自分で行うタイプが多いんです。すべてがブランディングにつながることなので。

税所 なるほど。

白木 ブランドを創ることと起業は、似て非なるものかもしれません。ここ2、3年、IVSやG1サミットなどでtech系の起業家の方々と会うことが多いのですが、そういう経営者とは経営のやり方が少し違うように感じていて。

税所 へえ。どういうところが違いますか?

白木 短期的な成長戦略よりも「愛されるブランド」に育てることが大切だったり、長い目で見たブランディングを意識することだったり。tech系の経営がブレていいというわけではなく、ブランド創設においてはリーン・スタートアップのような戦略はとれない、ということですね。まずは製品を出して少しずつ修正……では、信頼されるブランドにならないので。

税所 なるほど、たしかにそうですね。最近、リーダー像や「組織の中でも自分の役割」について考えることが多くて。夏子さんは自分のいちばんの役割は何だと思いますか?

白木 志を掲げる、ということではないでしょうか。10年後、50年後、100年後のHASUNA像と夢をつくる役割ですね。今の決断が未来の姿に沿っているか、と最終的なジャッジをするのが私ですし、それをミーティングで仲間に伝えることも私の務めです。税所さんはいかがですか?

税所 e-Educationはバングラデシュはじめ、スリランカ、南米パラグアイなど世界中に20人の仲間がいて、それぞれの国にいるリーダーがマネジメントしています。各国独立採算性で、リーダーがそれぞれファンドレイジングしていて。たとえば、フィリピンではフィリピンのリーダーがユニクロさんから支援をもらってくる、という感じです。リーダーの裁量がかなり大きかったですね。

白木 では、税所くんは何を?

税所 僕は、紙芝居を持ってプレゼンして回って、事業を切り拓いたりお金を集めたりしてくる、という役割でした。いわば、放し飼い状態です(笑)。

白木 つまり、資本力は税所くんのプレゼン力にかかっていたわけですね。

税所 いやいや、そんなかっこいいものではなくて……「紙芝居力」くらいのものです!

白木 紙芝居力って(笑)。

税所 ソマリランド事業でも、今日みたいに紙芝居を持っていろいろな人にお話しをしに行っています。「7人のサムライを集めよう!」とアクションを起こしているのですが、なかなかうまくいかなくて……厳しい状況ですね。あ、それで今、ちょうどREADYFOR?(レディーフォー)というクラウドファンディングで資金調達もしているところです。

白木 クラウドファンディングはぴったりですね。ちなみに、どのようなところにプレゼンに行っているんですか? 企業? 個人?

税所 個人ですね。この前は田原総一朗さんのところに行って支援のお願いをしたら、「こんな頭のおかしい企画に100万も出すか!」と言われたりしながらも(笑)、隣にいた早稲田の先生と折半してご支援いただいたりしました。本当にありがたいことです。