いざ、ジンバブエへ

 どうしても会いたかった彼女の名前は、マリアン・クヌースさん。デンマークとジンバブエのハーフの女性です。コペンハーゲン・ビジネススクールで修士号を取得し、パイオニア・オブ・チェンジという団体を共同創始者として立ち上げて活躍したあと、ジンバブエでクフンダ・ビレッジという「学び」にフォーカスした村を創りました。2009年には世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダーズ」にも選ばれています。

幸福大国デンマークが<br />アフリカにできること

 マリアンさんの話は、デンマークにいる頃から聞いていました。「南アフリカに行くなら、少し離れているけど絶対彼女に会った方が良い」とメンターからアドバイスを受けていたのです。そこで事前に調べてみると、彼女が立ち上げたクフンダ・ビレッジは、コミュニティデザインの素晴らしい成功事例ではないかと気づきました。

 クフンダとは、ジンバブエの主要な言語の一つであるショナ語で「学ぶ」という意味です。クフンダ・ビレッジでは主にジンバブエの子ども、若者、コミュニティリーダー向けに、彼らがもともと持っている知識とリソースを使って働きかけるときの自尊心、知恵、キャパシティを取り戻すリーダーシップを学ぶ機会を提供しています。

 ビレッジなので実際にそこで、村やプログラムの運営・管理をしながら30人ほどの人が自給自足に近い生活をしています。マリアンさんが幸福大国のデンマークとジンバブエのハーフなので、彼女が2つの国の価値観を融合して作った村とは一体どんなところかととても興味がわきました。そこに行けば、幸福大国と言われるデンマークの新たな一面も発見できるのではないかと思いました。

 そんな期待を胸に、1週間の休暇を使って一人で南アフリカからジンバブエに向かいました。ケープタウン国際空港からジンバブエの首都、ハラレまでは飛行機で約4時間の旅です。ハラレ国際空港にマリアンさんの運転手の方が迎えにきてくれました。車で約30分。ジンバブエの大平原の中に突然その小さな村は現れました。

 子どもたちの楽しそうな声が聞こえてきます。ジンバブエの人口の98.5パーセントは黒人です。村に一歩入ると、子どもたちは見たことのない人種に会ったかのような様子で、バックパックを背負って登場した私を目を丸くして見つめています。

 村中の注目を浴びながら人だかりの中を歩いていくと、運転手さんがマリアンさんを見つけて紹介してくれました。その日はカルチャーデイで、彼女は子どもや村の人、ハラレから遊びにきた友人たちに囲まれていました。皆が食べていたトウモロコシの一種を挽いた粉で作った、ジンバブエの伝統料理のサザを私にも振る舞ってくれ、暖かく迎えてくれました。

幸福大国デンマークが<br />アフリカにできること

 今回の滞在では、マリアンさんがクフンダ・ビレッジ主催のワークショップに招待して下さったので、朝から夕方まで4日間ゲストハウスファシリテーションという手法をジンバブエの人たちと学ぶという毎日を過ごしました。その中で空いた時間を使ってマリアンさんにインタビューをしました。

 まずは、クフンダ・ビレッジを創るに至った経緯について聞いてみました。すると、マリアンさんはデンマークの意外な一面を教えてくれました。