血圧の基準値に関する議論が続いている。冷静に考えると、ピンポイント測定で健康・不健康を判断するには無理があった、ということだろう。

 だいたい血圧という代物は、1日中変動している。一般的には夜間が一番低く、起床前から起床後に上昇。さらに夕方から夜にかけて低下というリズム(日内変動)を刻む。その間、上司と口論になれば急上昇するし、気温が上がれば下がる。また、シフトワーカーの深夜勤務中は上昇傾向にある。ようは、変動パターンのなかで「より危険」な高血圧を見つけることが肝要、というわけだ。

 今年6月末、24時間の血圧変動と死亡率との関係を調べた国際共同試験の結果が、専門誌に報告された。日本を含む数カ国の約7000人の男女(平均年齢52歳)が対象で、登録後、6年間にわたり追跡が行われた。その結果、夜間血圧の変動幅と肥満度や喫煙歴、糖尿病の既往などが相関。また、夜間血圧の変動幅が大きいほど心血管死亡率や心血管疾患の発症率が高いことが判明したのである。一方、日中血圧の変動幅との関連は認められなかった。

 さらに詳しく調べると、夜の収縮期血圧(上の血圧)の変動幅が夜間の血圧平均値から±12.2mmHg以上ある場合、それ未満と比べて心血管疾患の発症率が41%増加。しかも、心血管死亡リスクが55%、全死亡リスクが59%も増加している。

 もともと夜間血圧が適正に下がらない、日中より上昇傾向にある人は、心血管疾患リスクが高い。今回、さらに「変動幅」というリスク因子が加わったことになる。また、同じ変動幅でも、日中より夜間の血圧が要注意らしい。

 最近は、眠っている間の血圧を測る家庭用血圧計が販売されている。しかし、正しい評価には医療用の血圧計による24時間のモニタリングが必要だ。気になる方は、かかりつけ医と相談して一度は測定してみるといいだろう。

 ちなみに、家庭用血圧計は、二の腕にベルトを巻く「カフ・オシロメトリック装置」がベスト。家庭内血圧では、135/85mmHg以上が高血圧と見なされる。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)