ただ、世界的な景気減速のなかで、社員のクビを切ろうとしている企業に雇用継続を求めても、現実的ではない。たとえば、工場派遣を行なうある派遣会社関係者の言葉は、労働者の苦境ぶりを浮き彫りにしている。

  「特別なスキルを問われない工場労働者が失業しても、一般企業への転職は不可能に近い。年長フリーターと同様に、雇用の受け皿はないも同然」(関係者)

 もはや状況は、「就労支援というよりも失業対策が必要な域に達している」と言えそうだ。

大分キヤノンの失業者を狙え!
就農支援に名乗りを上げる自治体

  「完全に八方塞がり」かと思える状況の中で、注目すべき動きもある。実は、失業者が続出するなか、雇用情勢の激変をチャンスと見て、農業分野に雇用対策の動きが出始めているのだ。

 たとえば、大分キヤノンによる1000人規模の「非正規社員切り」が行なわれた大分市では、失業対策を市役所の各課で検討。「人手不足が常態化している農業に求職者をつなぐことはできないか」と議論していたところ、JAおおいたや大分市地域本部が協力に名乗りを挙げたという。

 大分市は12月15日、「失業者50~60人のパート社員を確保する」と失業対策を発表。これは、市の相談窓口に来た失業者に情報を提供し、農業に興味を持った相談者をJAに紹介するという試みである。12月15日から19日の5日間だけで、就農に関する問い合わせが25件あった。相談者の3分の2が女性で、あるメーカーの孫請け会社から突然解雇された女性は、「時給など選んでいる状況ではない」と駆け込んで来たという。

 大分市では1年を通して野菜が収穫でき、今は大葉や三つ葉の時期。繁忙期の現在、パート社員が確保できれば生産性も高まる。JAおおいたでは、「大葉などの収穫、出荷は人海戦術でないと作業が間に合わない状態。1生産者で200人のパート社員を雇っていることも珍しくない。相談者のうち10人は、すでに農家に受け入れられた」(野菜園芸課)としている。

 さらに「今回は緊急対応だが、農業、工業、商業と産業が数あるなか、農業の厳しさとやりがいを知ったうえで興味があれば、選択肢の1つに考えて欲しい」と、出荷作業が落ち着く年明けから説明会などを拡充する計画だ。

 農業法人への就職や、パート社員として高齢農家を手伝う形でスタートする方法もあるため、今後は本格的な就農を促すきっかけ作りになるかもしれない。

 とはいえ、農業への参入はハードルが高いのも事実である。

 実際、日本の農業人口が大きく増加しない背景には、さまざまな問題がある。新規就農希望者によれば、「農業をやりたくても、農業法人では月給20万円を超えることが少なく、経済的な自立が困難」「農地や農機具を買う資金がない」など、関心があっても途中で挫折するケースが多い。