柳川 そこからして、ちょっと普通じゃないですね(笑)。

松嶋 正直言うと僕は修業時代、すごく手が早いわけでもなく、料理をするのもあまり好きじゃなかったんです(笑)。でも、料理を考えるのは大好きでした。作業するのも汚いから、「お前みたいに仕事が雑な日本人は見たことない」とフランス人に言われるくらいでしたし。

 ただ、とにかく会話はみんなとしていたし、シェフにも「今回この料理をなぜ考えたんだ」とよく聞いて、教えてもらいました。そうしてコミュニケーションを重ねることで、クリエイティビティとは何かがわかってくると、「自分でできる!あとはいい料理人をマネージメントすれば料理はできる」と思いましたね。

 フランスの三ツ星、二ツ星シェフって、元羊飼い、数学の教授を目指していた人など、料理出身じゃないこともあるんです。そんな彼らのすごいところこそ、クリエイティビティです。ある土地の食材を使って、これまで食べてきた・見てきた経験から、自分のお店の料理人に指示しながら、作品を作っていく感じですね。

クリエイティブになりたいなら旅に出よ

柳川「クリエイティブな発想は、どう生み出せばいいですか?」松嶋「フランス人にクリエイティビティがあるのはなぜだかわかりますか?それは年間5週間も休むからです」

柳川 いま日本企業の多くが、クリエイティビティがある新しい製品、良い製品を生み出さないと生き残れないと考えています。でも、クリエイティビティはどうすれば生まれるか、どう社員にクリエイティブな仕事をさせるか、どの会社も悩んでいると思うんですね。分野は違いますが、クリエイティブな発想は、どう生み出せばいいでしょうか?

松嶋 僕自身は、すごくクリエイティブに生きていると自負できます。フランスに飛び出したこともクリエイティブですし、フランスに住んでなぜフランス人にクリエイティビティがあるのか、どこから生まれるかを自分自身で整理してきましたから。

 フランス人がクリエイティブなのは、年間5週間も休むからです。また、インスピレーションの受け方にも秘密があります。なぜみんなバカンスで南仏に行くと思いますか。それは、あれらの場所が“国際的なハブ”だからです。多くの人が休みに来ていて、いろんな出会いや体験でいろんな情報が得られるからこそ、クリエイティブになれるのです。

 僕のお店は、LVMHグループのリブランディングをしている方がアートディレクターなのですが、彼とクリエイティブとは何か談義したんです。すると彼は「クリエイティブとはエゴイストだ」と言うんです。「エゴイストはみんなわがままで、性格が悪くてきつい人だ。それは、自分の意見を通したいから、自分を守りたいからだ。では、最高のエゴイストは誰か。それは出産前の女性だ」と彼は教えてくれました。母親は、生まれてくる子どもを守らなければなりませんから。

 世界最高のクリエイティブとは、子どもが生まれること。女性は子どもを産むことに対していろいろと知識と情報を得なければならない。子どもを大きくするために大切なのは、栄養ですよね。いろんな栄養を摂って子どもを大きくして膨れて爆発したエネルギーが出産です。クリエイターも、そうでなければならないというのが彼の持論でした。つまり、情報、知識をいろんなところから集めて、溜めたものを爆発させるから新たなものが生まれるのです。