特許がイノベーションを加速する

 会社の売り上げが伸びたあと、ジレットを待っていたのは特許紛争でした。ジレットの偽物や、質の悪い類似品が市場に溢れ、ジレットの特許への対抗がなされました。

ジレットは辛抱強く戦い、もしくは相手企業を買収して黙らせました。同時に「2枚刃」「3枚刃」「5枚刃」に代表される発明を続け、特許申請をし続けました。それこそが、競争力を維持する道だと信じて。

 本格的な特許制度が生まれたのは17世紀のイギリスでした。イギリス議会は「専売条例 Statute of Monopoly」を制定し、発明や新規事業に対し最長14年の独占権を認めました。それまで、国王が恣意的に与えていた不安定なものから安定的制度に変わったことで、イノベーションに向けた多くの投資がなされ、「産業革命」につながったと評価されています。

 ワットによる蒸気機関の発明(1769)も、ジョージ・スティーブンソンの蒸気機関車の実用化(1814)も、特許がとれたからこそ、技術の完成・実用化に向けた投資が継続されたのです。特許制度がイノベーションを加速するのです。

 ジレットと同時期を生きていた、トーマス・エジソン(Thomas Alva Edison、1847~1931)もその信奉者であったでしょう。彼は多くのものを発明しただけでなく、特許化し、会社(のちのGEなど)をつくって事業化して、その発明を世に広めていきました。

 蓄音機の実用化(1877)、そして、白熱電球の商用化(1879)。エジソンは送配電システムの構築やトースターなど電化製品の発明を通じて、家庭に電気を普及させることに大きく貢献(*3)しました。

*3 発電面では交流でなく直流方式にこだわり、大失敗を演じた。