マリウポリ市内のスポーツセンターで。サッカーグラウンドで射撃訓練を行う市民 Photo by Konstantin Chernichkin

4月半ばからウクライナ東部で始まった政府軍部隊と親ロシア派民兵との戦闘では、すでに2000人以上が死亡し、国連の報告によると100万人以上の住民がウクライナ東部を離れて別の町や国に移り住んだのだという。ロシア派民兵だけではなく、ロシア軍の正規兵もウクライナ東部で戦闘に参加しているという報道もあり、事態は泥沼化の様相を見せている。ウクライナ問題はどういった展開を見せるのだろうか。

街には塹壕や検問所が出現
サッカー場は射撃訓練所に

「マリウポリ市内では塹壕が掘られたり、射撃訓練をする市民が増えてきたが、市民はまだ普通の生活を送っているように思える。工業都市で、市民の多くが工場で働いているため、仕事を辞めて町を離れるといったこともあまり無いようだ」

 英字紙キエフ・ポストのカメラマンとして数日前からウクライナ南部のマリウポリに滞在するコンスタンティン・チェルニチュキン氏は、マリウポリ市民が想像していたものとは異なる、普段の生活を送っていることに驚いたのだという。ウクライナ国内外のメディアの報道によると、マリウポリからわずか40キロ離れた場所では現在もウクライナ軍部隊と親ロシア派民兵との間で激しい戦闘が続いており、多くの死者を出している。

 人口約50万人のマリウポリに親ロシア派民兵やロシア軍がやって来るのは時間の問題という見方が現地では強まっており、すでに町の周辺には塹壕や検問所がいくつも作られ、市の中心部には対戦車ミサイルも設置されたのだという。また、これまでは市民の憩いの場として利用されてきたスポーツセンターは、ウクライナ軍兵士が町の防衛のために志願してきたマリウポリ市民に対して、ライフルなどの使い方を教える軍事訓練所に様変わりし、サッカーの練習場は射撃訓練所として使われている。

「ライフルを持った兵士が町をパトロールし、ロシア軍の侵攻に備えて訓練に参加する市民も少なくないが、まだそれほどの緊張感はない。しかし、24時間後に町の様子がどうなっているかわからないのも事実だ」(チェルニチュキン氏)