日立がイタリアの鉄道関連メーカー2社の買収に名乗りを上げた。買収が成功すれば、鉄道で欧州開拓を目指す日立の武器となるとともに、業界動向にも影響がありそうだ。

弱点克服への“最後のピース”<br />伊企業買収に日立が名乗り日立は英国の高速鉄道の巨大案件を受注。今年、インフラ輸出の成功例として、安倍晋三首相も現地見学に訪れた
Photo:REUTERS/アフロ

 イタリアは日本と並び、首相が短命である。今年2月、わずか10カ月で辞任した前首相に代わり、39歳のマッテオ・レンツィ氏が新首相に就き、政権の陣容が一新された。

 低迷する経済の立て直しが新首相の最大の任務だが、日立製作所にとっては、この交代が買収交渉を大きく動かすきっかけとなった。

 というのも日立は、イタリアの防衛産業を担うフィンメカニカの子会社で鉄道事業を手掛けるアンサルドブレダ、鉄道信号のアンサルドSTSの買収を模索していた。8月になり、日立による2社の買収検討が報じられたが、実はこの2社は2011年から、業界で「オープンターゲット」(重電関係者)とされており、日立も何度となく接触を続けていたのだ。

 目下、日立の鉄道事業は、業界では注目の的だ。04年に英国で高速鉄道を受注したかと思うと、13年にも英運輸省から車両計866両の更新プロジェクト(約8800億円)も獲得し、数少ない鉄道輸出の成功例とされている。

 さらには昨年末、英国北東部で車両製造工場の建設を開始したほか、今年4月に鉄道事業の本社機能もロンドンに移転させるなど力の入れようは生半可ではない。