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「働き方」という経営問題―The Future of Work―

「顧客に会わない営業」はなぜ生まれたのか?
IT企業があえて挑む“PC強制撤去”の効果

河合起季
【第10回】 2014年9月19日
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 PCにかじりついて1日の大半を過ごすことが立派な仕事だと勘違いしているIT中毒の社員たち。それでは、新しいアイデアを出したり、新規顧客を開拓したりという付加価値の高い仕事をする時間はどんどん減少してしまう。

 でも、多くの人が同じ状況だから、「それはおかしい、本来の仕事ではない」と指摘する人もいない。いったい諸悪の根源はどこにあるのだろうか。

ツギハギ・並べ替えのパワポ資料から
アイデアは生まれない

 吉村本部長はその1つとして「パワーポイント」を挙げる。アイデアを創出するための社内会議にパワポ資料は不適切だという。

 「1枚1枚スライドで説明していくパワポは、難解な物事をストーリー立てて説明するときには適していますが、全体像が見えにくい。全体像が俯瞰できないと、いろいろな角度から議論できないため、いいアイデアは出てこないんです。

 我々が現場だった時代は、社内会議の資料は『A4サイズ1枚くらいにまとめなさい』と指導されました。当然、パワポのほうが情報量は多いのですが、どちらが本質を表現できているかというと、相当煮詰められているA4のほうです。この煮詰めるという作業がクリエイティブな物事を考えるための重要な要素の1つなのです」

 得てしてパワポの資料は、いろいろな情報をツギハギして、それを説明しやすいように並べ替えたものになりがちだ。

 本質を考えるという大切な作業が抜け落ち、結果的にITが人間の思考力や創造力をスポイルしてしまう。しかも、そのツギハギと並べ替えが仕事だと錯覚してしまっているというのだからタチが悪い。

 こうして本来、付加価値を生み出すことに向けなければならないパワーがルーチンワークに向かってしまうことになる。しかも、本人は一生懸命やっているのだから、誰もサボっているとは思わないのだ。

乱れ飛ぶ「社内CCメール」は
責任回避の手段なのか!?

 さらに、吉村本部長が諸悪の根源として挙げるのが「洪水のように押し寄せるメール」。その大半は参考情報や、中身を読んでもどんなアクションが求められているかわからないものだ。勝手に送られてくる必要のない情報のために時間をつぶしてしまう人が多い。

 こうした事態を招いている原因の1つは、メインの宛先以外の人にも「参考情報として目を通しておいてほしい」として同時に送る社内CC(カーボンコピー)だ。

 「CCメールが、送られた人の時間を奪うのも問題ですが、そのウラには、CCをしておかなければ、『なんとなく不安…』と思わせる企業文化があることも大きな問題です。

 『オレ、聞いてないよ。勝手に決めたキミたちの責任だろう』と後で言われないように、リスクヘッジとしてCCをしておこうというわけです。しかし本来、そんな不安は不要、当事者同士の話し合いに任せたほうが物事はスピーディに進むはず。意味のないCCを入れる文化は、いずれ企業を衰退させかねません」

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人口減少による働き手の不足と経済・社会のグローバル化が、企業経営を取りまく大問題となっている。そのなかで、企業が競争優位性を築くためのキーワードとして浮上しているのが「ワークスタイル変革」だ。識者への取材や企業事例の紹介を通じて、すべての企業と働く人に問われている「働き方」の課題を明らかにしていく。

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