人間は思いのほか理性的な生き物ではありません。理性ではわかっていても、感情に突き動かされて行動してしまうこともしばしばです。人の好き嫌いなどは、理屈で説明できることはむしろ稀で、「何となく気が合わない」とか、そんなふうにしか答えられないことが多いと思います。

顕在意識と潜在意識のズレが生む「スレ違い」

 実はこれは当然のことなのです。なぜなら、感情を生み出しているのは、理性ではなく潜在意識だからです。

 私たちの意識は、顕在意識と潜在意識の2層構造になっています。顕在意識とは「仕事と自分は比べられるものではない」など、自分が理性的に認識している意識のこと。その顕在意識の下にあるのが「潜在意識」です。

 潜在意識とは、生まれてから経験してきたさまざまな記憶をもとに、無自覚に形成される意識のことです。私たちの行動を左右する感情はこの「潜在意識」から生まれているのです。

 そのため、理性(顕在意識)では「仕事と自分は比べられるものではない」とわかっていても、潜在意識は過去の記憶から、自分が最優先されていない状況に危険信号を発し、不安を抱くようになるのです。

 額面どおりに相手の言葉を受け取り、いくら正論を述べても、相手の潜在意識が発している真の要求を満たしてあげることができません。相手が求めているのは「答え」ではなく、自分の感情に対する「理解」だからです。

 その証拠に話がこじれたときに、「あなたは私の言葉がわかっていない」と怒る相手はいません。「私の気持ちがわかっていない」と訴えるはずです。

 先の例でいえば、女性は本当に自分と仕事のどちらを大切に思っているかを聞きたいのではなく、「今の私の寂しい気持ちをわかってほしい」「育児で大変な状況を理解してほしい」という心の叫びを受け取ってほしいのです。

 異性から人気があったり、人間関係を築いたりするのが上手な人は、話の理屈や内容よりも、言葉の裏側にある相手の感情を読むことに長けています。もしあなたが「もめたくない」「早くこの事態を収拾したい」と思うのであれば、相手の潜在意識=本音にアクセスして「この人は自分の味方だ」「気持ちをわかってくれる」と思わせることが先決事項になるのです。