人はハッピーでいるためなら自分の行動を正当化する

 この営業マンがどの程度、意図して話を進めていたのかはわかりません。ただ、ワナにはめられたような思いはなく、ハッピーな記憶として残っているのは、認知心理学の知識で説明が可能です。「説明が可能」というよりも、典型的な人の心理・行動パターンにあてはまります。

 満足感のポイントとなっているのは、「買わされた」のではなく、私自身が「自分で加入することを選んだ」ことです。人は自分で選択している限り、ハッピーでいられます。自分の決断に満足することができるのです。

 なぜ自分で決断するとハッピーでいられるのかというと、「自分の選択は間違いではなかった」と正当化する気持ちが無意識に働くからです。

 人は相容れない2つの考えや認識(認知)が発生すると、ストレス(不協和)を感じます。これを「認知的不協和」といいますが、この認知的不協和というストレスを解消するために、自分の言動と意識のズレのつじつまを合わせようとするのです。

 つまり、今回の場合なら、「すぐに保険に加入するつもりはなかった」という当初の考えと、「結果的に保険に加入してしまった」という事実が不協和を起こしています。そのため、私はこの不協和を解消するために「この営業マンは信頼できる人なんだ。だから私にとって悪い保険を勧めるわけがない。加入したのはいいことなんだ」と、自分の選択が間違っていなかったと正当化する感情が強く働いているのです。

 実際にこの営業マンは信頼できる人で、保険に加入した選択は間違っていなかったかもしれません。けれども、それらを客観的に、言いかえれば理性的に裏づけることは困難で、結局は個々人の潜在意識が生む感情に委ねられているのです。

 これは人間関係、恋愛関係についても同じですよね。離婚会見でのコメントを聞いていても、ほとんどの場合「いい経験でした」となるわけです。そこで「本当は財産も奪われて、浮気もされて、最悪な結婚でしたよね?」と事実を追及することのほうが、非人間的な行為に思えます。

 人は悲しみや辛さを忘れて明日に立ち向かうために、自分を正当化してでも「ハッピー」でいたい生き物なのです。「ハッピー」であることは生きる原動力ともいえます。

 だから、あなたが相手の心をしっかりと読んで、ハッピーにさせてあげられれば、相手はあなたを本能的に「特別な人」と感じて、あなたから離れられなくなります。