サハリン州は、石油・天然ガスプロジェクトで劇的に変化しようとしている。人口はソ連末期に75万人だったが、現在では48万人と大幅に減少している(ちなみに、サハリン州は北海道とほぼ面積は同じだが、北海道の人口は550万人である)。要は、ソ連崩壊後、一時放置されたような状態になって寂れたわけだが、近年は人口減少率が低下し始めている。

 そして、驚かされるのが、州政府予算の急増である。2014年度の州政府は、歳入が当初の予定1084億ルーブル(2926億円)から1318億ルーブル(3559億円)に、歳出が当初1159億ルーブル(3129億円)から1335億ルーブル(3604億円)にそれぞれ修正されて、大規模な補正予算が組まれている。ちなみに、2008年度は、歳入291億ルーブル(786億円)、歳出307億ルーブル(829億円)だったので、歳入も歳出も劇的な増加だ。また、州民の平均賃金も2007年には、わずか2000ルーブル(5400円)だったが、2012年度には4万4208ルーブル(11万9391円)に急増している。

 しかし、現状では石油・天然ガス開発による利益が、州民の生活水準の向上に結び付いていない。州都ユジノサハリンスクの多くの道路は古く未整備でデコボコが多い。建物はソ連時代の、古ぼけて無機質な集合住宅である。水道は、なんと100年前の日本統治時代に敷設されたものをそのまま使用しているという。日本のインフラ整備は長持ちしていいと、妙に評価が高いそうだ。

プーチン大統領が直々に「保育園を作れ!」
サハリン州「発展戦略2025」の本気度

 ご存じの通り、ロシアは強力な中央集権体制である。サハリン州知事は中央政府の任命であり、州の政策は基本的に中央の意向で進められる。石油・天然ガスの税収の6割は中央政府に入り、州政府が自由に使えるのは4割だ。街を見る限り、州政府が意欲を持って独自の政策を打ち出すつもりはないような印象を受けた。ところが、今回現地でいろいろ話を聞き、資料に目を通していくと、実態はかなり違っていた。

 例えば、ウラジーミル・プーチン大統領から、直々に州知事に対して「教育と医療の充実」という指示が出ているのだという。それも今年の冬、サハリン州政府でちょっとした汚職があり、プーチン大統領が州知事を呼び出して「そんな金があるなら、保育園の1つでも作れ!」と叱責したようだ。ウクライナ問題で世界から孤立するプーチン大統領が、直々に「保育園」と指示を出すとは面白い。