第1回でも書かせていただきましたが、民法が制定されたのは約120年前の明治29年(1896年)です。120年前の法律が、形を変えて現在に至るまで存続し続けているのです。
そのため、(1)現在の社会経済への対応をするため、民法の改正が行われることになりました。また、(2)わかりづらい内容の民法を国民一般にわかりやすいものとし、さらに、(3)債務の履行がされない場合についての救済手段について改正が施されることになりました。
今回は、今回の改正の中心である(1)現在の社会経済への対応について、その背景を説明していくことにします。具体的には、「消滅時効」「法定利率」「保証」「債権譲渡」に関する改正になります。それぞれ簡単に説明します。
フランス由来の
短期消滅時効制度が廃止
消滅時効とは、権利を持っていても長い間権利行使をせず放置しておくと、もはや権利行使が認められなくなるという制度です。消滅時効の改正にかかわる事例は多岐にわたるのですが、ここでは一例を紹介します。
消滅時効は、一般的に権利を行使することができるときから10年間で時効にかかります。ただし、現在の民法では、様々な職業ごとに異なる短期の消滅時効の規定が置かれています(170条~174条)。
具体的には、飲食店のツケの消滅時効が1年で時効が完成するといった具合です。「えっ、そんなに短期間で消滅してしまうのか」と驚かれたかと思います。
そもそも短期消滅時効の制度は、フランスの古い慣習を明文化したものだったのですが、民法の母国であるフランスですら廃止されており、現代に適合しなくなったと考えられるに至りました。そこで、新しい民法ではこの種の規定は廃止されることになりました。
その他にも改正点は存在しますが、追って説明をすることにします。
高すぎる法定利率5%は
実態に合わせる方向に
現在の民法では、「別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする」と規定されています。
5分とは、5%のことです。しかしながら、ご存じのとおり、現在の金利相場からして年5%というのはあまりにも高い利率ということになってしまいます。金銭の貸し借りに関する事件が長引くことにより、大きな利益を得ることになってしまいます。利息を取るために訴訟を遅延させるようなことにもなりかねません。
そこで、現在の金融市場の金利水準に合わせるべく法定利率についての改正を行うことになりました。具体的には、法定利率を原則として3%としながら、市場金利の動向に合わせて3年ごとに変動させるという制度を導入することになりました。