厚生労働省の発表(10月1日)によると、2013年のわが国の健康寿命は、男性が71.19歳(対2010年比+0.78歳)、女性が74.21歳(同+0.59歳)に伸びたそうだ。
健康寿命とは、健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態を指す。健康寿命と平均寿命の差は、男性で9.02年、女性で12.40年あるが、この期間は介護など人の手助けが必要となる可能性が高いということだ。わが国は高齢化については世界の先頭を走る課題先進国だが、そのゴールは、人間が自立して人間らしい生活を送れるという意味で、平均寿命ではなく健康寿命の延伸にあると考える。いくら平均寿命が伸びても、晩年は寝たきりという社会を、私たちは望んでいるのだろうか。
健康寿命を伸ばす
ベストの方法は「働くこと」
ところで健康寿命を伸ばすためには何をすればいいのだろうか。俗に「テクテク・カミカミ・ニコニコ・ドキドキ」などといわれているが、これは適度な運動(テクテク)、3度の規則正しい食事(カミカミ)、心の健康(ニコニコ)、五感を使った感動(ドキドキ・ワクワク)を指す。
しかし、よく考えてみると、普通に規則正しく働いていればこれらの要件はほぼ満たされるが、仕事を辞めて家にいると、これらの要件を毎日充足することはかなり難易度が高くなることに気がつく。つまり健康寿命を伸ばそうとすれば、少なくとも70歳ぐらいまでは、働きたい人はすべて働けるような社会環境を整えることが必要なのだ。
ヨーロッパで聞いた話だが、ヨーロッパの高齢者ホームでは、ヘルパーが朝起こしに来て朝食に連れ出した後、個室には(ヘルパーが)鍵をかけるという。つまり住人は、医者の指示で横になる必要がある場合を除いて、夕食が終わるまで自分の個室には戻れないのだ。
個室に自由に入れるようにすると、人はついつい安楽を求めるのでベッドに横になる確率が高くなるという。すると、すぐに足腰が弱まってしまう。従って多少つらくても、リハビリルームや図書室、庭や町への散歩などで時間を費やす方が高齢者のためになるというのだ。