アプリ内課金という悪魔
――デザインの力で気づかずに金を使わせる
ゲームがプレイヤーをハマらせるために使う手段は、報酬だけではない。障害、つまり“フラストレーション”も利用する。単純なゲームから複雑なゲームまで、あらゆるゲームには、慎重に仕組まれたフラストレーションが含まれている。たとえばときおり、あるレベルをクリアすると急にゲームがむずかしくなることがあるが、そういった障害は金を出せば切りぬけられるようにできていることが多い――アプリ内の課金手段を使い“パワーパック”を購入することなどによって(純粋主義者たちがこうした近道を見下していることは、言うまでもない)。
一見シンプルなアングリーバードのようなゲームにさえ、プレイヤーにもう少し金を払わせるための小さなトリックが隠されている。だれもがみな、すべてのレベルで3つ星をゲットできる神童みたいに楽々とプレイできるわけではない。そのため、行きづまった人たちには、「マイティ・イーグル」という、アプリ内課金を使って得られる手段が用意されているのだ。これは、突破できないどんなレベルもクリアしてくれるツールで、一度99セント支払えば、繰り返し永久に使える。
「アプリ内課金について特筆すべきことは、アップルが、できるだけ“摩擦なく”使えるようなデザインを心がけたことだ」と言うのはあるCEOだが、彼はあらゆるアプリ開発者がそうであるように、秘伝ソースの材料をあまり明かそうとはしない。
「ユーザーは、iOS(アイ・オーエス、アップルのモバイルオペレーティングシステム)で金額を支払ったことに、ほとんど気がつかない。電子メールアドレスを一度入力すれば、数回クリックするだけで、バーチャルグッズを買いつづけることができる。
だから、子どもたちが親のiPhoneを使ってタップしまくった日には大変なことになる。そうした親たちは、必ずぼくらのところに連絡してきて、払い戻しを請求するんだ。これは、どんなに簡単に金を使いつづけることができるかを示す好例だろう。2歳児だってできるんだからね」
(続く)
※本連載は、『依存症ビジネス』の一部を抜粋し、編集して構成しています。