「遊び尽くした体験」の中で、生きる力は育まれる

 私は、「遊び尽くした総量」が多い人ほど、あと伸びすると考えています。成功した人に共通するのは、「遊び上手である」ことです。

 東証マザーズに上場している「インフォテリア株式会社」の平野洋一郎CEOも、「遊び上手」のひとりです。インフォテリアは、企業のデータ連携ソフトウェアでマイクロソフトを押さえて、日本一のシェアを獲得したこともあるベンチャー企業(ソフトウェア開発)です。

 平野さんは、私の高校の後輩(熊本県立熊本高等学校)に当たります。彼の高校時代の成績は、450人中、440番から450番くらい。奇跡的に熊本大学に入学を果たしたものの、すぐに中退。その後、ワープロソフトの開発や製品企画に従事して、1998年にインフォテリアを立ち上げました。

 彼は、優等生ではありません。高校時代の成績は、まさに最下位。大学も中退。熊本弁まる出し。それでも現在は、ソフトウェア業界で存在感を際立たせています。

 彼の実家は、「みかん農家」です。自然に包まれた山間地で、工夫をしながら遊び尽くした野外体験が、彼に「生きる力」を授けたのだと思います。彼の根幹にある強い心は、遊び尽くした体験の中で膨らんでいったことでしょう。

 熊本県の県民性を称して「肥後(ひご)もっこす」と呼ぶことがあります。「肥後もっこす」とは、正義感が強く、頑固で、妥協しない気質のこと。平野さんは、まさに「肥後もっこす」の典型といえるでしょう。
 社会がどのように変わろうと、自分の力で生き抜いていけるたくましさを持っているのです。

 彼は、「熊本弁ネイティブの会」(熊本弁だけで話すグループ)の管理人をするなど、いまも「遊び」をつくるのがとてもうまい。

 この会には、400名以上のメンバーが参加していますが、これほどたくさんの人が集うのは、「おもしろいことをやってくれそう」という期待を抱かせるからであり、平野さんに「人としての遊び心と魅力があるから」にほかなりません。

(次回、【第7回】は、2014年10月14日(火)の掲載です)