テレビ「情熱大陸」「カンブリア宮殿」「ソロモン流」で紹介! 幼稚園児~小学生を「メシが食える魅力的な大人に育てる」ことを主眼とした学習塾「花まる学習会」の「本当に頭がいい子の育て方」を徹底解説! 作文・読書・思考力・野外体験を重視したユニークな教育手法は全国で多くの支持を得ている。
子どもに「自分が好き」という
自己肯定感をつけさせる
高濱正伸(たかはま・まさのぶ)
1959年、熊本県生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。同大学大学院修士課程修了。1993年、小学校低学年向けの「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を設立。同時に、ひきこもりや不登校児の教育も開始。1995年には、小学4年生から中学3年生対象の進学塾「スクールFC」を設立。教育信条は、子どもを「メシが食える大人に育てる」こと。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」「ソロモン流」をはじめとするテレビ出演のほか、ラジオ、雑誌、新聞などにおいても、そのユニークな教育手法が紹介されている。著書の累計売上100万部超。
長谷川亮くん(仮名・小学4年生)は、算数に関して、天才的なひらめきを発揮する子どもです。大人を唸らすような解答をつくることもあります。
ただ、幼児性が解消されておらず、とくに、食べ方がちょっと汚いのです。食べ散らかしたり、くちゃくちゃと音を立てて食べることもありました。
もちろん長谷川くんのお母さんは、「わが子の食べ方が汚い」ことに気がついていますし、できれば直したいとも思っています。ですが、基本的には長谷川くんのすべてに肯定的です。
「注意をする」というよりは、子どもへの期待のあらわれとして、「ちゃんと食べられるようになろうね」と声をかけることはあっても、
「どうして、あなたは、そんなに汚い食べ方しかできないの!」
とイライラすることはありません。「じきに直るだろう」と、気長にかまえています。
長谷川くんのお母さんの対応は、正しいし、大物を育てられる器のお母さんだと私は思います。その理由は2つあります。
ひとつは、「子どもの脳力(のうりょく)というものは、総量が決まっている」からです。長谷川くんの脳力の大部分は、算数に向かっているのですから、小学4年生の段階では、まずはその方向にエネルギーを使わせたほうがいいと思います。
子どもは、それほど器用ではありません。たくさんのことを、すべて100%の脳力で対応することは難しい。別のことに気を取られると、せっかく天才的に算数に向いている脳力が、分散されてしまいます。
長谷川くんが「ごはんは、キレイに食べなくちゃいけなんだ」と自らにストレスをかけすぎると、生活習慣を改善することはできても、その半面、算数力が止まってしまうことが考えられるのです。
もうひとつの理由は「15歳を過ぎれば、たいていの子どもは、自然と落ちつくようになる」からです。
経験上、どんなにやんちゃな子どもでも、15歳前後になると、分別がつきはじめます。食べ方の汚い長谷川くんも、15歳になれば、「こんな食べ方をしていたら、恥ずかしいな…」「食べ方を直さないと、友だちから笑われちゃうかもしれないな…」と、自分で気づくようになるのです。
だとすれば、いまは、「あれしろ、これしろ」と子どもにストレスをかけるより、長谷川くんが「得意なこと」を褒めて、それを伸ばしてあげて、「自分が好きという自己肯定感」をつけさせたほうがいいと思います。
学校や友だちといった「外側」からの承認も子どもを強くしますが、しかし、子どもの自己肯定感の中心にあるのは、なんといっても「親の言葉」です。
そして、小学校の低学年までの子どもなら、とくに「お母さんの言葉」が最も重要なのです。親の承認が、何よりも「子どものやる気」を育てるのです。
親に認められた経験は、子どもの根っこを強くします。ですから親は、とにかく子どもを褒めてあげてください。
ですが、「褒めること」と「甘やかしたり、過保護にすること」を混同しないようにしてくださいね。