「オーナーシップ」は顔でわかる

 こういう話をすると、みなさんのなかには「起業しなければ、オーナーシップは持てないのか」とガッカリする人もいるかもしれません。

 ですが、「オーナーシップ」とは、その人の姿勢の問題であって、立場によって決まるものではないのです。私の場合、たまたま「起業」がオーナーシップを持つきっかけになったというだけの話。

 逆にいえば、経営者であっても、単に会社のオーナーであるだけで「オーナーシップ」のない人はいますし、従業員であっても、しっかりと「オーナーシップ」を持ってプロの仕事をやり抜く人もいます。

 私は経営者として、とにかくビジネスに関わる人みんなに、毎日、明るい顔で「オーナーシップ」を持って仕事をしてもらえるよう工夫してきました。

 たとえば、ナッツ・ビジネスであれば、生産農家の人にナッツの木のオーナーになってもらいます。品種改良してよい実をつける苗を1株200円くらいで購入してもらい、自分の畑に植えるしくみにしたのです。ちゃんと畑を耕して肥料をやり、大きくておいしい実がたくさんつけば、それを売った代金が全額農家の人に入ります。

 このしくみによって、契約農家の人にとってナッツに関わることすべてが「自分事」になり、いつでも一生懸命仕事をしてくれるようになりました。こっちから細かいことをとやかくいわなくても、「オーナーシップ」を身につけてもらうだけで、自分で頭を働かせて創意工夫するようになる。

 このスタイルが、ケニアのたくさんのナッツ農家に受け入れられて、ナッツ・ビジネスはみるみる拡大していきました。

 その人が仕事に対して「オーナーシップ」を持っているかどうかは、「顔」でわかります。これはとても単純で、楽しそうな顔をして仕事に取り組んでいる人には、「オーナーシップ」があるのです。そして、つまらなさそうに、苦痛そうに仕事をしている人には「オーナーシップ」がありません。「オーナーシップ」とは、本来楽しいものなのです。

 次回は最終回です。12月3日の掲載を予定しています。