社会制度も日本の優れたソフトパワー

 改革・開放路線が始まった1978年から北京オリンピックが開催された2008年までの30年間は、工業製品などハードの分野で日本を含む多くの先進国に学び、追随し、やがて超越するという時代だとすれば、2009年以降は、ソフトの分野で日本を含む多くの先進国に学ぶ時代になるだろう、と私は思う。

 ハードの分野では、中国に追い付かれて日本が苦労している場面が増えているが、ソフトの面では、日本がまだまだ中国の先を走っている。だから、講演などの場を通して、私はよく日本人に次のように呼び掛けている。

「GDPの逆転やハード面での競争力の低下に自信を失う必要はない。むしろどのようにソフトの面での優位性をできるだけ長く保つのかが課題になっている」

 ここに言う日本がもつソフト分野での優位性とはより広いものを指している。別にコンピュータのソフトウエアやテレビ番組、アニメなどのコンテンツを限定していない。国民皆保険という言葉に代表される日本の医療保険制度、所得格差問題を効果的に解決した税制度、老後の生活を保証する年金制度、義務教育制度、さらに省エネ、環境保護、成熟した民度、秩序ある社会など、他分野にわたるソフトパワーを指すものだ。

 近年、私は中国で発言するチャンスがあるたびに、日本に学べともう一度声を大にして呼び掛けるべきだと主張している。今度の学ぶ対象はよりソフト的なものになる。しかし、形があり、目に見えやすく、数字としても表現しやすいハード的なものと比べ、ソフト的なものは体で体感しないとなかなか気付かない。

 だから、国民同士の草の根レベルの交流がより密接に行われる必要がある、と思う。より多くの中国人観光客が日本を訪問することを喜ぶ理由もそこにある。旅行などを通して日本社会がもつそのソフトパワーを体感し、日本に学び続ける必要性を理解してもらえると思っているからだ。