成長が見込めるところへ投資する

中野 あとは実際、どうやって運用するかということですが、資産は基本的に将来、成長が見込めるところに投資することが肝心だと考えています。それも分散ができるといちばんいい。

野尻 セミナーなどでもよく聞かれますよ。「分散って、どの程度分散すれば良いのでしょうか」って。

中野 どう答えているのですか。

野尻 分散投資は一つよりも二つ、二つよりも三つ、三つよりも四つのほうがよりベターな世界です、と答えています。確か、分散投資の効果が顕著に表れるのは、7つの資産クラスに分散するところまでだと言いますね。まあ、簡単な方法としては国内株式、外国株式、国内債券、外国債券という4つの資産に4分の1ずつ分散しても、分散投資効果は得られると考えています。

【後編】<br />老後難民にならない!<br />95歳まで安心して暮らすための「ほったらかし投資」野尻哲史(フィデリティ退職・投資教育研究所所長)一橋大学卒業。国内および外資系の証券会社の調査部を経て、現職。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。主な著書に『投資力』(日経BP社)、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』『日本人の4割が老後準備資金0円』(ともに講談社+α文庫)

中野 私は、誰にでもぴったりとフィットするアロケーションというのは、存在しないと思うのです。たとえば「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は、株式と債券の比率を原則として半々(50:50)にしています。

 これは、どんな年代、そして誰にでも合うポートフォリオの比率ではないと思いますが、ベストの選択肢というよりもベターな選択肢を目指しているのです。満足感は8割程度かも知れません。

 その満足度を8割5分に引き上げたいというのであれば、自分で日本株ファンドを加えるとか、外債ファンドを加えるとかすればいいでしょう。ただ、毎月分配型のようなファンドは、資産形成層には向かないので使わない方が良いでしょうね。

毎月分配型ファンドは
金融機関が売りやすい

野尻 毎月分配型のすべてが悪いわけではないと思うのです。たとえば高齢者が毎月、運用益と元本の一部を取り崩しながら生活費に充てるというのに、この手のファンドを利用するという手はあると思います。

 実際、米国にはたとえば3000万円を20年後に0円にするファンドが存在します。まさに使いながら運用するという場合にぴったりの商品性です。

中野 販売会社の売り方に問題があるのでしょうね。分配金をまるで預貯金の利息であるかのように印象付けて販売しますから、顧客の誤解を招いてしまうのです。なかには「このファンドの購入時手数料は割高ですが、分配金も高いので、4回分の分配金で元が取れます」というセールストークをしている営業担当者もいるそうですよ。運用するのは大事ですが、金融機関の口車に乗せられないようにする自己防衛も必要です。

中野 そこは自分の本でも何度も書いているのですが、まずは窓口に行ってみよう、ではダメなんです。窓口では、自分にとってのオススメが出てくるわけではなくて、金融機関に都合のよい、つまり売り手側が儲かる商品を売りつけられてしまうケースが非常に多いので…。