14日の総選挙では、自公合わせて3分の2を超す議席を確保する勢いだと報道されている。もし、その通りの結果になれば、次に控える2016年7月の参議院選挙は、憲法改正の発議に必要な3分の2を取れるかどうかの「天王山」となる。そこですこし気が早いが、自民党が2012年4月に決めた「日本国憲法改正草案」と、今年11月に発表した公約集「政策BANK」を基に、憲法を考えてみた。

国防軍は米軍とともに戦う!?

 14日に投開票が行われる衆議院選挙は、新聞各紙等の世論調査と各地の情勢取材によれば、自民党が300議席、あるいはそれ以上を確保しそうで、公明党と合わせれば定数475議席の3分の2、317議席を超す勢いという。憲法改正の発議には衆、参各院で総議員の3分の2以上の賛成が必要だが、参議院では自民114人、公明20人に次世代の党7人を加えても141人で、3分の2の162人には届かず、2016年7月の参議院選挙が改憲か否かを決する「天王山」になる形勢だ。

 それだけにもし与党がメディアの予想通り衆議院で3分の2以上を占めることとなれば、それから次の参院選までの1年7ヵ月は憲法、防衛、安全保障を巡る論議が白熱化するだろう。その中で論争の的となりそうな点を、自民党が2012年4月に決めた「日本国憲法改正草案」と、今年11月に発表した公約集「政策BANK」を基に考えてみた。

 憲法改正草案を自民党が発表した際には第3条「国旗は日章旗とし、国家は君が代とする。日本国民は国旗及び国歌を尊重しなければならない」とか、第9条の2「わが国の平和と独立、並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」といった分かりやすい条項が、草案の右傾的性質を示す例としてもっぱらメディアで取りあげられた。だが、そうした「言葉」以上に、内容自体に問題があると思われる条項が少なくないのだ。

 9条の2の3は「国防軍は、第1項に規定する任務(国の平和、独立、国及び国民の安全確保をさす)を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行う事ができる」としている。国際連合が求める活動をする、というなら安全保障理事会の決議を要するなど、一応の歯どめもあるが、「国際的に協調して行われる活動」となると、複数の国がとる行動、例えば米国が韓国、オーストラリア、タイなど友邦を引き込んだベトナム戦争や、米英軍が侵攻したイラク戦争、NATO諸国によるユーゴスラビア爆撃、またソ連が東欧4ヵ国の同盟軍を引き連れてチェコスロバキアに侵攻し、改革派政権を制圧したのもこれに該当する。これらは「国際社会の平和と安全」とか「集団的自衛」「人道の危機」などのスローガンを掲げて行われた。日本の国防軍が米国が行う戦争に次々と参加することになりかねない条項だ。

 第9条にある「(国防軍は)国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」との条項と、第25条の3の「国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない」との条項を重ねあわせれば、在外邦人の保護のための出兵を想定している。