矢野 そうですね(笑)。眉だけではなく、「まばたき」も重要です。信頼される話し方をするためには、まばたきの回数をできるだけ少なくするのです。あまりまばたきを繰り返すと、ウソを言っているのではないかと聞き手には思われるからです。神田さんの話し方を、動画などで拝見して研究してみましたが、眉がよく動いているのはもちろん、まばたきの回数も少ない。自然にそれが身についているのは「さすが」のひと言、すばらしいですよね。

自分に自信を持つことが
他者からの信頼を勝ち取る

神田 いや~、私の場合は、売上を上げたい一心というか……。でも、物を売る場合だって、売り手はたしかに仕事としてそれをやっているわけですが、実際には、売り手と買い手の共同作業だと思うのです。
 売上を上げるコツは、売り手である自分と、買い手である他者との境目を、いかになくすかに尽きるのです。お客様と自分とが非分離の関係になったとき、最も反応率が上がります。
 だから重要なのは、まず買い手であるお客様の生活に共感すること。それは、話す側と聞く側との関係にも似ています。

矢野 まさに共同作業ですね。

神田 ところが、テクニックでなんとかしようとすると、たちまち、言葉にしても営業にしても、コモディティ化して差別化できなくなってしまいます。そこには共感は生まれない。
 だから、話し方のテクニックを磨く前に、どうすれば、聞き手との間に共同作業の環境を築き上げられるかに力を入れたほうがいいでしょう。

矢野 神田さんがおっしゃることは、人に何かを伝えるときにとても役に立ちそうですね。

神田自分が思い描いたストーリーが現実をつくるということなのですが、人に話をする際、根底にストーリーをきちっと描いておくと、それが人を動かす力を持ってきます。
 オバマ大統領が2008年11月4日の大統領選挙勝利演説で、当時106歳のアン・ニクソン・クーパー女史が投票に行った話をしました。
 彼女に106年という米国の歴史が凝縮されているという話です。たった25秒間のストーリーは、全米に感動をもたらしました。
 この場合、テクニックではなく、想いが一番大事です。それは、自分以外の人をハッピーにさせるにはどうすればいいのか、から始まります。言うなれば、「利他思考」なのです。