「どうやって調べたのか分かりませんが、筐体からモーター、フィルターまであらゆる生産現場を訪ねてきました」(同社社員)

 さらに1カ月ほどすると、長らくバルミューダの技術部長を務めた男性(40代)がシャオミに転職したいという意向を申し出た。会社側はやむを得ず守秘義務契約を結び、この男性の退職を認めたのだという。

 それから約半年──。フタを開ければ、そこに自社製品と“瓜二つ”の空気清浄機が生まれていた。

「特許侵害がないか弁護士も含め調査中ですが、意匠権一つ取っても他国と解釈が異なり、どこまで対処できるかまだ判断できません」(同社社員)

 同社は14年1月から空気清浄機を中国市場で発売しているが、1台当たり約6000元(約11万4000円)という価格もあって、出荷台数はまだ数千台規模だ。一方のシャオミはその数分の1の価格で、年間数十万台という大量発注を始めたという話がすでに漏れ聞こえる。どちらが市場を制するか。このままでは結果は目に見えている。

スマホ輸出に暗雲
インドの裁判所が販売差し止め

 やりたい放題に見えるシャオミだが、そうした知財戦略の不透明さは、彼らのビジネスにゆっくり影を落とし始めている。

 12月8日には、インドの高等裁判所がシャオミ製のスマホについて販売差し止めを命じた。これはスウェーデンのエリクソン社が、自社の無線関連特許を侵害されたと提訴したもので、販売停止は全機種が対象だといわれている。

 スマホの端末事業では、競合メーカーは互いに有効な特許群をクロスライセンスすることで、膨大なライセンス料を回避するのが基本となる。過去に米グーグルがモトローラを9600億円で買収したのも、強力な特許がグローバル競争に不可欠と判断したからだ。

 国内成長に飽き足らず、アジアなど海外展開を始めたシャオミ。将来は米国市場に上場するともうわさされている有望株は、その透明性と正当性を市場に証明することができるのか、大きな正念場を迎えることになりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)