三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥#6Photo:Steve Chenn/gettyimages

住友グループ主要8社のグループ内政策保有株式と社外取締役・社外監査役について、2013年度から11年間の変遷を徹底調査した。グループ内に在籍する企業は対等な関係にあるともいわれる住友グループにおいて、多くの企業が重きを置く銘柄があった。実はその銘柄は、住友グループの序列最上位に位置する企業でもある。特集『三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥』の#6では、住友グループ主要8社の政策保有株式と社外取締役・社外監査役の“持ち合い”の推移を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

「結束の住友」のゆえんは
400年を超える事業精神の継承

 日本の名門三大財閥である三菱、三井、住友の中で、住友グループが三菱、三井の両グループと決定的に異なるのは、創業家が存在していることである。岩崎家が“断絶”した三菱グループ、三井家が11にも分かれた三井グループに対し、住友グループはいまなお1人の家長を頂く。現在の当主は17代目・住友吉左衛門芳夫氏だ。

 住友家はグループの精神的支柱として敬愛され、家長は「住友の事業精神」を体現するシンボリックな存在としてあがめられている。

 住友の事業精神とは、住友家初代・住友政友が遺した『文殊院旨意書』に記された商人としての心得だ。「確実を旨とし浮利に趨(はし)らず」。目先の利益を追わず、信用を重んじ確実を旨とする経営姿勢が、住友の事業精神の神髄である。

 この事業精神の順守と継承を目的に集うのが、戦後の財閥解体後に最も早く再結集した住友グループの社長会「白水会」だ。現在は住友グループ19社で構成する。「結束の住友」と称されるほど、住友の事業精神で結ばれた住友グループは、「血は水よりも濃い」企業集団といわれる。

 グループ結束の逆風が、企業統治改革の大波である。東京証券取引所が2018年に改訂したコーポレートガバナンス・コードで、東証は上場企業に対して、政策保有株式について保有目的や、保有適否の検証、縮減方針などを開示するよう求めた。コーポレートガバナンス・コードを後ろ盾に、特に海外の機関投資家や「物言う株主」(アクティビスト)は、政策保有株式の売却に圧力をかけたのだ。

 果たして、住友グループの各社は、この圧力に対してどのように向き合ってきたのか。

 そこでダイヤモンド編集部は、13年度、18年度、23年度について、住友グループ主要8社の政策保有株式と社外取締役・社外監査役の“持ち合い”を徹底調査した。

 対象としたのは、住友グループの「住友家評議委員会」に所属する9社のうち、非上場の住友生命保険を除く8社。三井住友銀行は親会社である三井住友フィナンシャルグループ(FG)、三井住友信託銀行は親会社の三井住友トラスト・ホールディングスを調査した。各社の有価証券報告書に記載されている大株主、社外取締役・社外監査役、政策保有株式の状況をまとめた。

 次ページでは、住友グループ主要8社の政策保有株式と社外取締役・社外監査役の持ち合いに関する推移を明らかにする。住友グループ各社の政策保有株式を分析すると、徹底した“平等主義”を取っている住友グループにおいて、別格扱いとなっている企業が見て取れる。