三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥#5Photo:Steve Chenn/gettyimages

三菱や住友と比べ、もともと付かず離れずの緩い団結心が特徴の三井グループ。果たして「御三家」の三井住友フィナンシャルグループ、三井物産、三井不動産の結び付きは――。特集『三菱・三井・住友 揺らぐ最強財閥』の#5では、三井グループ主要8社のグループ内政策保有株式と社外取締役・社外監査役について、2013年度から11年間の変遷を解き明かす。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

付かず離れず
緩い団結心の三井グループ

 日本「三大」財閥グループである三菱、三井、住友において、最もグループの団結心が緩いといわれているのが三井だ。

 三井家が11家にも分かれた、重工業の多角化に遅れた――。三井グループの緩さの理由はあれこれと指摘されるが、その背景の一つとして挙がるのは、三井直系ではない企業がグループに加盟していることだ。

 その由来は、1970年代にまでさかのぼる。

 戦後の財閥解体後にいち早く再結集して勢いを増していた三菱グループ、住友グループの後塵を拝していた三井グループは、61年に結成された社長会「二木会」の活性化を図る目的で、旧三井銀行の取引先で三井直系ではない企業を招いた。「次世代を担う企業」として東芝や三越(現三越伊勢丹ホールディングス)、そしてトヨタ自動車が加わった。

 ただし、三井グループには、三菱グループの重工業路線の拡大のように大方針があったわけでもなかった。特に、オブザーバーとして二木会に参加することになったトヨタをはじめ、三井グループの“外様”はビジネス面でうまみを得られるわけでもなく、三井グループ企業と関係を密にするメリットには乏しかったといえる。

 二木会関係者によれば、オブザーバーであるトヨタの豊田章男社長(現会長)が出席する機会はもちろん、二木会に加盟する社長全員が顔をそろえたことは「ここ近年記憶にない」という。

 そんな中、東京証券取引所が2018年に改訂したコーポレートガバナンス・コードで、東証は上場企業に対して、政策保有株式について保有目的や、保有適否の検証、縮減方針などを開示するよう求めた。コーポレートガバナンス・コードを後ろ盾に、特に海外の機関投資家や「物言う株主」(アクティビスト)は、政策保有株式の売却に圧力をかけた。

 その圧力にさらされた三菱グループの各社は、保有するグループ企業の株式を次々と売却していった(本特集#4『三菱グループ主要11社「株と社外取の持ち合い」全解明!三菱UFJ・重工が商事株売却の衝撃、“鉄の結束”崩壊か?』)。三井グループは果たして――。

 そこでダイヤモンド編集部は、13年度、18年度、23年度について、三井グループ主要8社の政策保有株式と社外取締役・社外監査役の“持ち合い”を徹底調査した。

 対象は、三井グループの社長会「二木会」に所属する25社のうち、序列が最上位にある三井不動産、三井物産、三井住友銀行の御三家に加え、二木会に所属する企業の常務以上が参加する勉強会&懇親会「月曜会」の幹事を務める5社を含めた主要8社。三井住友銀行は親会社である三井住友フィナンシャルグループ(FG)、三井住友信託銀行は親会社の三井住友トラストグループを対象とした。

 各社の有価証券報告書に記載されている大株主、社外取締役・社外監査役、政策保有株式を調べた。

 次ページでは、三井グループ主要8社の政策保有株式と社外取締役・社外監査役の持ち合いに関する推移を紹介する。団結心が緩いとされる三井グループにおいて、とりわけ御三家と呼ばれる三井住友FG、三井物産、三井不動産の政策保有株式の持ち合いについては、意外な“素顔”が見えた。