お互い苦しいのがわかってたから、
仕事の話はほとんどしなかった。

編集部 本の中でもお二人で飲むシーンが出てきますが、経営する会社の業界も違うお二人でどんな話をするんですか?

内藤裕紀(ないとう・ゆうき)[株式会社ドリコム代表取締役社長] 1978年生まれ。京都大学在学中の2001年に有限会社ドリコムを設立し、代表取締役に就任。インターネットサービスの提供を主軸に事業を展開。2006年に東証マザーズ上場を果たす。

内藤 業界は違っても、組織を作る、会社を経営していくという点では共通の課題が多いんですよ。社長と係長とか、業種も立場も違ってしまうとさすがに話題に困るだろうけど。

杉本 採用をどうするかとか、資金調達をどうするかとか。何かと話題は尽きないですね。

内藤 同年代の経営者っていう仲間意識があるんでしょうね、きっと。ただ、2008年ごろの苦しい時期は、たまに飲んでもあまり何も話さなかったね。

杉本 お互い苦しいのがわかってたから、仕事の話はほとんどまったくしなかった。

内藤 会社はもちろん、どこに行っても気が張り詰めてる状況だったから。杉ちゃんと会って、黙って飲んでるだけで救われる思いだったなあ。

杉本 内藤さんの方が先に窮地を抜け出して。僕が民事再生と自己破産して地獄の底にいる時に、中目黒でご飯を奢ってもらって励ましてくれたのを覚えてますよ。
 内藤さんやグリーの田中さんとか、同世代の心を割って甘えられる仲間がいたことには本当に助けられました。ただし、ご飯は奢ってもらっても、会社のお金に関しては仲間だからこそ絶対に迷惑を掛けないと決めてましたけど。

内藤 たしかに、資金調達に甘えが入るのはよくないね。だからこそ、僕もまだ会ったことのない三木谷さんに出資のお願いに行ったのかもしれない。

杉本 なにはともあれ、僕がいうのもおこがましいんですが、あの当時の危機を乗り越えたからこそ、内藤さんの経営者としてのレベルもワンステップ上がったなと実感します。

内藤 ありがとうございます。

杉本 うん、先輩に対する態度も変わったし。

内藤 そこに戻ってくるのかよ!(笑)