欧州経済が正念場を迎えている。欧州債務危機の発火点だったギリシャでは、反緊縮財政を公約に掲げる野党が勝利した。一方、原油価格下落によるデフレ懸念から、欧州中央銀行(ECB)は量的緩和の導入を決定したが、財政規律の緩みなどの副作用が指摘されている。欧州危機は再燃するのか。
「悲惨な緊縮財政は捨て去る」──。世界中が注目していた1月25日のギリシャ総選挙は、冒頭の反緊縮財政を公約に掲げるチプラス党首率いる最大野党の急進左派連合が勝利した。300議席中149議席(第1党に対するボーナスの50議席を含む)を獲得し、同じく反緊縮を唱える独立ギリシャ人党との連立政権が発足した。
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隠れ債務が発覚したギリシャを発火点に欧州債務危機が起こったのは2009年10月。自力で国債を発行して資金調達できなくなったギリシャは、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3者から金融支援を受け、その条件としてこれまで緊縮財政を進めてきた。だが、今回の総選挙では反緊縮派が圧勝し、公務員削減や年金削減など、痛みを伴う構造改革に国民がNOを突き付けた。
ギリシャへの金融支援は2月末が期限となっているが、同国はその期限を延長してもらう必要がある。「3月20日以降、国庫が払底する可能性がある」(ギリシャ高官)からだ。もし新政権が公約通り緊縮財政を破棄すれば、金融支援は打ち切られ、ギリシャは債務不履行(デフォルト)の瀬戸際に立たされる。「3月の銀行危機の可能性はゼロではない」(岸田英樹・野村證券シニアエコノミスト)。