1960年代生まれは、最初のデジタルネイティブである

 われわれは世代ごとに大きく異なった経験を経て育ってきています。たとえば近代最大の革命である「IT(情報技術)」との関わりでいえば、日本に1960年代に生まれた者たちは、非常にユニークな経験をしています。

1964年3月生まれの私でいえば、小中学時代に「マイコン」が生まれ、高校時代に「パソコン」が生まれました。そして大学時代に「家庭用ゲーム機」が一気に広まりました。

・12歳:NEC TK-80(自作キット、記憶装置なし、機械語)
・15歳:NEC PC8001(完成品、FDDあり、BASIC)
・19歳:任天堂 ファミリーコンピュータ(ファミコン)

 比較的裕福な家の子であれば、中学の頃からシャープのMZ-80K(1978年発売、19.8万円)を使ってプログラミングの真似事をやっていたかもしれません。それでも流石に前年発売のAppleIIには手が届かなかったでしょう。フロッピーディスクやディスプレイとのセットで約100万円(*6)。「夢のホームコンピューター」とPC雑誌は謳っていました。1979年に出たNECのPC-8001(本体16.8万円)は、しかし、その夢をぐっと個人に近づけるものでした。

 それでもセットで数十万円であったので、私たちは所有者の家に集まっては、プログラミングやゲームに興じていました。ただし、ゲームをするためには莫大な準備時間を要しました。PC雑誌(『アスキー』など)に掲載されたゲームプログラムのリストを、延々と打ち込み続けるのです。ちょっとまともなゲームだと2人で8時間はかかります。もちろん入力ミスしまくるのでチェックが大変です。

 さんざん頑張って、でも動かなくて悲嘆に暮れて、雑誌の翌月号に「プログラムの印刷ミスがありました」などという小さな訂正記事を見つける、なんてこともしばしばでした。その度にアスキー編集部を呪ったものでした。

中高時代にマイコン・パソコン、大学時代にスーパーマリオとFORTRAN(*7)の洗礼を同時に受けた私たちは、急激なITの隆盛を、そのソフトウェアの進化と共に体験することになります。機械語、アセンブラ、BASIC、といったプログラミング言語から、MS-DOS、DOSV、Windows 3.1、といった初期のオペレーティングシステム(OS)まで、否応なく接することとなりました。

*6 1ドルが280円前後。AppleII本体は1298ドル、純正FDDは595ドルと、ドルベースでは当時かなり「低価格」だった。
*7 科学技術計算用のプログラミング言語。大型コンピューター向けで、事前の「宣言文」がやたらと長い。1957年にIBMにより開発・実用化された。