将来の個別化医療の進展見据えて
米国では国と民間がタッグ
米国政府も、技術革新への投資を惜しみません。2015年1月30日、オバマ大統領は「Precision Medicine(個別化医療=オーダーメイド医療)」に2.15億ドル投資することを発表しました。個別化医療は、遺伝情報をもとに、1人ひとりの発症リスクを評価したり、体質にあった治療法や薬の選択を可能にします。米国政府は、100万人の米国人ボランティアの全遺伝情報を収集し、個人の疾患の遺伝素因の発見と創薬を目指しています。個別化医療を実現し、米国内の医療費の長期的な低減や、ビジネスとしてのグローバル展開を目指すという狙いがあるからです。米国は、国(公的研究)と民間(遺伝子検査ビジネス)の2段構えで個別化医療が飛躍的に進展しようとしているのです。
http://www.wsj.com/articles/obama-to-lay-out-215-million-precision-medicine-plan-1422615602
米国では、急進する遺伝子医療の技術革新に対して、遺伝カウンセリング、遺伝情報差別禁止法の制定、遺伝情報のプライバシー保護や遺伝情報の所有権などの制度整備も発展しています。
日本でも医療機関における遺伝子検査だけではなく、Yahoo!ヘルスケア、DeNA、ファンケル、エバージーンといった大手企業で遺伝子検査サービスが始まったところです。今後、検査サービスの利用者が増えるにしたがって、米国と同じように、検査結果を受け止めきれない人が出てきたり、検査結果に伴う差別など様々な問題が生じる可能性は高いと考えられます。個別化医療の発展に向けては官民の協力体制など多くの課題が立ちはだかっていますが、まずは技術革新に伴う制度整備――遺伝子差別禁止法の制定、遺伝情報保護などの利活用の整備が急がれます。