18歳の時に出会った男性と同棲し、21歳で娘を出産(現在4歳)。かほさんの人生バイオリズムでは、元「夫」と同棲しはじめてから娘を出産するまでが、最も平穏だった時期となっている。

 しかし、その「夫」は虚言癖のある男性で、不安定就労・低収入のうえ、実は妻子がいて離婚していなかったことが判明。かほさんへの肉体的・経済的暴力(貯金を奪う・借金させるなど)も始まった。市役所に相談に行ったところ「シェルターにも入れてくれなかった」という。しかたなく娘を連れて父親のもとに身を寄せると、父親から暴力を受けることになった。

 その後、かほさんは父親の家を出て、不安定就労ながら行政の仕事に就き、デリヘルの仕事と掛け持ちしながら一人で娘を育てていたが、精神疾患が悪化したため就労を続けることができなくなった。CPAOの一時保護を受け、現在は生活保護を利用して生活している。経済面では一応の安定といえる状態にはあるものの、育児においての困難・また自らの精神疾患による困難を抱え続けている。

 かほさんが現在、最も困っていることは、「人に対する自分の姿勢」だ。どうしても人を疑った目で見てしまうという。娘に対しても同様で、朝、自分に抱きついてくれた娘が、テレビを見ていたり、他の場所に行ったりすると、「あ、やっぱり、この子私のこと突き放した」と思うそうだ。

かほさん(仮名・25歳)自身による人生バイオリズム。最低の時期は、暴力に満ちていた幼少期でもなく、虚言癖があり暴力もふるう元夫と同居していた時期でもなく、生活保護を利用して娘と二人で暮らしている現在
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 本記事で紹介するために、かほさんのストーリーを改めてたどり直しながら私が痛感するのは、かほさんの強さと健全さだ。「大人が、子どもに対して、大人の責任を果たす」を自らの子ども時代に全く体験していないのに、かほさんは懸命に、責任ある大人・良き親であろうとしてきた。現在も、そうあろうとしている。その方向性と実行しようとする力は、どこから来るのだろうか? 生育環境と生育歴を見る限り、「人間として産まれたときに、既に備わっていた」と見るべきではないだろうか? しかし、子ども時代に愛情ではなく暴力を注がれて育ってしまったことが、かほさんの努力の結実を阻んでいる。

 これから、誰がどれだけの資源を注げば、かほさんのようなシングルマザーに精神の回復をもたらし、必要だったはずなのに与えられなかった教育などの機会を提供し、生活保護を利用しつつも自信と尊厳のもとで日常を送れるようにすることができるのだろうか? 私には想像もつかない。ただ、現在の生活保護制度が、不完全・貧弱といえども、その最低限の支えとなっていることは事実だ。

 そして、シングルマザーを支えることと並行して、現在「待ったなし」で行わなくてはならないのは、現在、子ども時代のまっただ中にあるシングルマザーの子どもたちが「幸せな子ども時代」を送れるようにすること、せめて、近づけるようにすることだ。

 でも、どうやって? 課題はあまりにも、厳しく深く大きい。