この連載は今回で最終回となるが、最後にITでもデジタルマーケティングでもない「人の出会い」についてまとめてみたい。

 今まで解説してきた「7つの失敗研究」は、実際のデジタルマーケティングのプロジェクトがあり、それを必要と思うトップマネジメントがいないと、無意味なものに終わってしまう。読者の方も、こんなことはウチでは無理だな、絵空事だよな、何もやらなければ失敗しないし、忙し過ぎるな、と無視する人も多いだろう。

 ところが、マスクドニード(今は表出していないが、マスクで隠れているニード)を、このような連載、講演、勉強会、出版などの何らかの手段で情報発信し続けていると、思わぬところで共鳴する人との出会いがあり、最初の一歩を踏み出せることがある。

 例えば、30代に10年ほど行っていたイスラエルのビジネスへ入る最初は、旅行ツアーに参加し、提携先を見つけようとホテルでヘブライ語の電話帳からIT企業をピックアップしてもらい訪問するところからはじめた。

 そのうち、日本側とイスラエル側を兄弟で分担し、イスラエルのテクノロジーを日本にビルトインすることをミッションとするイスラエル人(弟)に出会った。彼は、日本側を担当していたお兄さんが横浜で仕事帰りに交通事故で亡くなったためビジネスが頓挫していると、ゆっくりと心情を語ったのである。

 私は、日本にイスラエルのイノベーションをビルトインするマスクドニードがあると考えていたので、お互いが共鳴し、それ以来、日本のベンチャーキャピタルのIT企業への最初の投資案件(Zero to One)をまとめたり、販売代理店になったり、日本語化したりと、20数回イスラエルを訪問し、深いリレーションを構築した。

 この例は、日本から遥か8500km以上離れたところに住むひとりのイスラエル人との出会いによるものだが、狭い日本ならこの連載に書いたことに共鳴する人と、偶然(必然?)の出会いがあってもおかしくない。

 そこで最終回は、出会いをテーマに、CMO(CMTを含む)が日本で創造(Zero to One)できるかどうかを考えてみたい。

 まずは、歴史に学ぶという意味で、日本でCIOが創造された経緯と、IT部門がシュリンクしつつある現在までを学ぶことから、今後、新しく創造されるであろう全体最適視点のデジタルマーケティングの創造価値を考察してみよう。