しかし、ペブルの製品に問題がなかった訳ではない。1回目のクラウドファンディングでの販売では、約束の製品出荷の日から1年遅れてしまった。ハードウェアの開発の遅れと生産での品質問題が足を引っ張った。フィットビット同様、創業の生業はソフトウェアなので、どうしてもハードウェアがおろそかになる。ペブルでは、その後ハードウェア開発にも力を入れ、デザインや性能が向上した。今年発表した新製品Pebble TimeとPebble Time Steelは前述したように快調な出だしだ。

 ペブルの成功の源は、ソフトウェアの発想でアプリケーションのユーザー体験を設計し、その実現手段としてハードウェアを設計したことだ。まずはソフトウェアありき、という方程式は変わらない。フィットビット同様、オープンAPIにより様々なアプリが提供されているのも、最初からソフトウェア発想で設計しているからできることだ。

「センター」と「エッジ」の主導権争いに
見事にスルーパスを通したiPhone

 フィットビットやペブルが成功した理由はその参入タイミングだ、と述べたが、それはどんなタイミングだったのだろうか。それを探る鍵は、「センター(中央)」と「エッジ(周辺)」のバランスだと考えている。IoTでは、顧客が触れるハードウェアとその裏にあるソフトウェア、クラウド側のサービスの全体が価値を提供する。

「センター」は、クラウドがそれに当たり、「エッジ」は、顧客周りのユーザーインタフェースや端末デバイスであり、それをつなぐのがネットワークだ。コンピュータ自体が高価だった時代はメインフレームに資源が集まり、端末はただのディスプレーだった。ハードウェア部品の性能が向上し、ネットワークが進化するとクライアント・サーバーというパラダイムが出てきた。

 クライアント(ユーザー側のマシン)に主体性を持たせ、センターのコンピュータはある程度分散させたサーバーに移行していった。さらにコンピュターパワーが向上し、ネットワークが太く安くなると端末側はより小さなパソコンやラップトップとなった。

 そしてインターネットの登場で世の中のすべての情報が廉価に繋がるようになると、グーグルのように再びセンターで巨大なデータセンターを運用するようになった。このように、その時々の「センター」と「エッジ」のバランスで全体システムの形が変遷する。

 そのようなバランスの変曲点で絶妙なタイミングで製品を投入し、世界を席巻したのがアップルだ。インターネットの普及で、バランスが一気にエッジ側に傾いていた時に、モバイル通信は電話会社による独占のためにバランスがセンター偏重となっていた。

 携帯電話は、設計思想もアプリケーションもすべて電話会社がセンターでコントロールしていた。電話会社中心のパラダイムとインターネットという分散型パラダイムが対峙していたその頃に、アップルはiPhoneを発売した。

 センター・エッジのバランスがエッジに傾く流れの時に、スマートフォンの重要部品のほとんどがちょうど出揃ったことを見計らって、完璧なまでにユーザーインターフェースに磨きをかけた端末iPhoneをセンターのクラウドサービスと組み合わせて投入したのだ。まさにここしかないというタイミングだった。