やりたい仕事にこだわる女性部下
責任ある仕事を任せたい上司
不況時に学生生活を送ってきた就職氷河期世代の若手は、男女を問わずとにかく真面目です。自炊中心でコツコツ貯金するのは当たり前。バブル世代のように給料が上がり続けると信じ、洋服や食事、デートなどに無駄な出費をすることも少ないようです。もちろん、その真面目さは就職活動時にも発揮されます。業界研究にも真摯に取り組み、企業選びも単なるイメージだけでなく、仕事内容まできっちり吟味して「こういう仕事がしたい」と語れる学生は珍しくありません。
しかしその一方で、「責任ある仕事を任せたいのに、やりたい仕事へのこだわりが強すぎて、融通が利かない」「少ない経験しかないのに、なぜ『自分はこれがやりたい』と言い切れるのか」と、彼らの仕事へのこだわりぶりを訝る、企業の経営者や人事担当者の声も多く聞かれます。
この、「やりたい仕事」へのこだわりぶりは、天職ドリームさんに特に顕著です。
ある天職ドリームさんは、「オイルがベタつくから」という理由でアロマセラピストを断念しました。実家暮らしなどの理由で、必ずしも安定した収入を必要としない女性の中には、「趣味や好きなことを生かして、やりがいのある仕事がしたい」と考える人も少なくありません。ただ、「やりたい仕事がしたい」という若手と同じく、本当にその仕事が自分に向いているのかが見えておらず、ささいなつまずきですぐ夢をあきらめてしまうのが、彼女たちの特徴です。
なぜ、これほどまでに彼女たちは「やりたい仕事」「好きな仕事」にこだわるのでしょうか。それは、先述のように締め切り意識から来る自分軸志向に加え、個性重視の「ゆとり教育世代」ゆえ、自己相対化能力が弱い、というひと言に尽きます。
本来、自分らしさとは他者と比較して初めてわかることです。しかし、個性を大切にと言われ続けた結果、関心が自分の内へ内へと向いてしまい、限られた自分の経験の中から「やりたい仕事」を決めつけてしまっているきらいがあるのです。
そして、現実とのギャップを矯正しきれないまま、また次の「天職」を求めてスクールに通ったり、見栄えのいいカタカナ職業を求めて転職活動をし続けたり……。いつまでも腰が落ち着かず、40歳を超えても夢をころころ変え続けているという笑えないケースもあります。