IOCは中国政府と北京五輪組織委員会が、大気汚染の改善対策を進めた努力を高く評価したのだ。選手たちがメダルを獲得できないのを大気のせいにされたくない、北京開催を決断したIOCのせいにされたくない、という意向が見え隠れしている。

政府の進める環境対策に
地方の旧式工場は対応できず

 さらに北京市環境保護局の杜少中副局長は、二酸化炭素排出量が多い鉄鋼首鋼グループを含む21社に対し、工場の操業停止または生産制限を行うよう指示している。7月20日からパラリンピック閉幕後の9月20日までと短期間ではあるが、業務の停止や生産制限を断行したことは、中国政府にしては画期的なことといえる。ただ、本来ならば、1年前、2年前からの対策が必要だったはずだ。

 上海宝山鉄鋼を代表に、今や中国の鉄鋼産業は世界の鉄鋼の3分の1を生産するほどに拡大し、世界的にも有名な企業に成長した。だが一方で、地方にある生産能力の低い鉄鋼企業が懸念材料として世界から注視されているのだ。

 鉄鋼業はほかの産業よりも二酸化炭素排出量が多いが、特に地方の鉄鋼企業は旧式の設備を利用しているため環境への悪影響の割合が高い。それでも地方財政が苦しい事情もあり、地方企業を倒産させることはできないのが現状だ。環境対策とペナルティへの告知が収賄に消えることのないよう、本当に管理を強化して欲しいものだ。

 鉄鋼以外でも厳しく管理が強化された。工場からでる廃棄物が空気汚染の原因だと指摘されても排出制限を守らない場合はすぐに閉鎖される可能性もある。すでに山東省では、魯北企業集団、魏橋創業集団、勝利発電工場など132の企業が操業停止の警告を受け、汚染物質排出基準をクリアできなかった場合、生産を差し止める処分が実施される。

 バブル崩壊がささやかれる中、目先の利益にこだわる中国式ビジネスが、やっと環境問題にも目を向けるようになった。昨年、私が訪問した中国企業や日系企業のほとんどが環境対策を考えるどころか「環境など気にしてたら儲けられないよ」と、世界の心配をよそに高笑いしていたのを思い出す。

 北京五輪開催を目前にして、いまさら取り組む環境対策。その成果は、本当にIOCのいうとおりなのだろうか。ヒヤヒヤしながら、選手たちの輝かしい金メダル獲得を見守りたい。