亡き息子から「自立した女性の生き方
として母を尊敬する」

 昔々、ある講演会で息子から母へ宛てた手紙ということで、わたしのことが書いてある手紙を読まれたことがあるの。

 朝のごはんとお味噌汁のにおいが僕の目覚まし時計だったとか、マヨネーズをつくるのが難しかったとか、やっぱり食べ物のことが書いてあって、最後のところで自分は自立した女性の生き方として母を尊敬するって。

 息子の生前、子育てのことをみんなに話すと息子に、「いいように言うとおかしいよ」と言われていたように、わたしの子育ても反省ばかり。
 だからこそ、今子育て中の若いお母さんたちにお伝えしたいなと思うのです。

 敗戦後70年、もっとよくしよう、もっとよくなろう、と競争しながら先のことばかりを見る社会の中で育った人たちが今、大人になり子どもを育てています。

先を見ないで「今を大事に」生きよう

 どんなお母さんも自分の子どもをよく育てようと思ってきました。
 でも、大人たちがいろいろと考えたり、それ以上によくしようと思ったりすると、子どものほうにもいろいろと考えが出てきて、結果として子どもも大人も満たされないようになってしまっています。

先を見ないで今というときを大事にしながら、子どもを育てると、いちばん自然にいくように思えるのです。

 数年前にある出版社から子育てについての本を書くお話をいただきました。
 初めのうちはわたしの子育てが今のお母さんたちに受け入れられるかどうか心配でした。

 それでお返事が遅くなったのですが、自分が育つときに嫌だったこと、よかったことを思い出していけばできるのではないかと思い、引き受けたのですね。

 わたしは叱られるのが、とにかく嫌でした。
 だから自分の子どもを叱らないで育てたいと思っていましたが、なかなかそうもいかないことはしょっちゅう。

 東北では、冬は雪が降りますから、その中で遊んで洋服を汚してくると、洗濯物もなかなか乾きません。それで叱って物置に閉じ込めたりしてね。