IBMの人工知能「ワトソン」が、日本の銀行の窓口に採用されて話題になっている。
ワトソンは、チェス・チャンピオンシップやクイズ番組の『ジェオパディー』での天才ぶりで有名になったが、こうしたケースはどちらかと言うとプレゼンテーション用の出演。本来はビジネスで役立つように開発されてきた。そして、アメリカではすでにいろいろなケースでワトソンが使われている。
臨床試験の被験者を
自動的にマッチング
最もよく知られているのは医療である。
たとえば、有名なメイヨー・クリニックでは、臨床試験で被験者を最適にマッチさせるのにワトソンが使われている。
臨床試験は、被験者の数が足らないことが理由で完了しないことがよくある。メイヨーでは、より多くの被験者を探し出すために、オープンになっている臨床試験希望被験者の疾病、医療データと、臨床試験の基準をワトソンが照らし合わせて、適切な被験者を捜し出すのだ。常時8000人分もの臨床試験が進行している同病院にとって、自動化されたマッチングは手順を効率化するのになくてはならないものである。
また、ガン治療を向上させるための利用もある。メモリアル・スローン・ケタリング・ガンセンターはIBMと協力して、何10年にもさかのぼる同病院でのガン治療記録と患者の医療情報をワトソンに読み込ませ、『ワトソン・オンコロジー』として世界のガン医療に役立てようとしている。
同病院は、毎年13万人以上のガン患者の治療を行っており、臨床試験でも先端をいく。ワトソンが、同病院の最新の医療データと過去の膨大なデータを学習することで、同病院のようなデータを持ち合わせない病院でも、目の前の患者のための最適な治療方法をワトソンが導き出すことができる。