がんに薬で対処する時代の
“終わりの始まり”を予感させる検査技術

 さて、じつはここからが本題である。

 以上で見てきたように、がんを発見するための検査技術は、人体を直接測定する方法から、血液など人体組織の一部を調べる方法へ、その研究・開発の方向性が進化してきている。

 そんなトレンドのなかで、去る3月12日、九州大学がこれまた画期的な方法を発表した。

 なんと! 1滴ばかりの尿でがんの匂いを見分けるというのである。もちろん、匂いを判別する主体はヒトではなく、犬と同等の1200種の嗅覚受容体を持つ線虫の行動特性によって判断するのだという。

 以下に、開発プロセスを簡単に説明する。

1)匂いに敏感な線虫に着目した。

2)がん細胞の培養液に対する線虫の反応を調べたところ、がん細胞の培養液に誘引行動を示す(引き寄せられる)ことが分かった。

3)さらに、がん患者のがん組織と正常組織とでは、がん組織のほうを好むことが分かった。

4)次に(血液ではなく)尿に注目した。

5)全てのがん患者の尿には誘引行動を示し、かつまた全ての健常者の尿には忌避行動を示す(遠ざかる)ことが分かった。

6)がん患者の尿に対する誘引行動は嗅覚神経を破壊した線虫では起こらないこと、線虫の嗅覚神経はがん患者の尿に有意に強く反応したことから、線虫は尿中にがんの匂いを感じていると考えられた。

7)さらには、ステージ1の早期がんにも反応したことから、早期がんを発見できる可能性が示唆された。

8)感度(がん患者をがんと診断できる確率)は95.8%、特異度(健常者を健常者と診断できる確率)は95.0%であり、同じ被験者について同時に検査した他の腫瘍マーカーに比べ、感度は圧倒的だった。