最近、ガンやアンチエイジングなどの専門クリニックで話題となっているガンの診断方法がある。それが血液中のガン関連遺伝子の量を測定し、微細なガンを見つけ出す「ガン遺伝子検査」である。

 周知のとおり、現在、ガンの診断方法は、PET(ポジトロン断層法)やCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像法、核磁気共鳴画像法)などの画像診断が主流である。

 だが、これら画像診断も完全ではない。というのも、少なくとも5~20年が経過し、大きさが6mm以上の組織に成長した段階で発見される事例が大半を占めるからだ。このため、発見できても既に手遅れだったり、再発につながる場合も少なくない。

 一方、このガン遺伝子検査の場合、わずか20cc程度の採血によって、5mm以下という微細なガンや分子、細胞レベルで発見できるのが特徴だ。ガン組織に生育する以前の「前ガン状態」を検知することで、食事や喫煙などの生活習慣の改善を含め、医師による徹底的な予防管理でガン化や再発に対応し、早めに手が打てるというわけだ。

 この技術の開発元であるジーンサイエンスによると「手術後の患者のガン再発リスクを知る目的で使われる事例が多く、現在、約100カ所の医療機関に導入されている」(神田睦則・取締役経営企画部長)という。

 最近では、金沢大学の研究グループによっても、採取した血液によるガン遺伝子検査の研究が進められており、類似の検査技術が次々と開発されそうな気配である。従来の画像診断に、これら血液を使った遺伝子検査を組み合わせれば、より精度の高いガン診断が可能になるのは間違いない。

 もっとも、現在のところ、この遺伝子検査は、健康保険が使えない。受診となると、自費扱いとなり、その費用も25万~30万円程度(医療機関によって異なる)と高額である。費用の制約もあり、本格的な普及にはもうしばらく時間が必要になるだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)