第三に、財政もこのままでは赤字がどんどん拡大します。しかし、財政赤字それ自体はリスクではありません。その対応策として「増税」を選択したために、増税に次ぐ増税となって国民が離反し、財政が崩壊するかもしれないというのが真のリスクです。人口減少によって財政を取り巻く環境が一変したのに、依然として高度成長時代の政策手段、つまり増税で対応しようとする政府の政策選択の誤りです。

 日本では、1955~2005年までの50年間で、1人当たりの租税収入(国税+地方税)は物価上昇を除いて約10倍に伸びました。人口増加時代で、国民のなかで働く人の割合が増え、技術輸入や高度成長の下で生産性の上昇が著しかったからです。一方、国民1人当たりの財政支出の伸びもほぼ10倍でした。そうした状況では、一度増税すれば財政収支は将来にわたって均衡します。収入と支出の変化方向が同じだからです。

 ところが、これからは違います。高齢化で働く人の割合が低下するので、労働生産性の上昇を見込んでも、1人当たりの租税収入は横這いになります。一方、今年度の予算を見ても財政支出は拡大の一途です。これでは、際限なく増税を続けざるを得ないことになります。

 1人当たりの租税収入が横這いなら、1人当たりの財政支出も横這いにして、収入と支出の変化方向を一致させること。つまり、人口の減少に合わせて財政支出総額を縮小すること、それが人口減少時代の正しい財政政策です。政府は頭の切り替えが必要でしょう。

インフラを維持・管理できず
都市部ではスラム化が進む?

 そして第四のリスクは、公共・民間の社会インフラを良好な状態に維持できなくなり、特に都市部でスラム化が進行するかもしれないということです。経済が縮小するのだから、インフラの維持・更新に回せるお金も減少することになりますが、それだけでなく急速な高齢化で貯蓄率も大幅に低下します。自宅の建設の場合と同様に、インフラの整備や維持更新には年間収入であるGDPから消費を差し引いた残り、つまり貯蓄が必要なのだから、貯蓄率が低下すれば、インフラの維持更新に回せるお金は経済の縮小以上に小さくなります。

 そうした状況は容易に予想されるわけなので、当然先々の維持補修に回せるお金に合わせて公共・民間の社会インフラの総量を規制するといった動きが少しは出てきてもよさそうなものですが、実際は逆方向です。政府は景気対策といって公共投資をどんどん増やし、オリンピック招致でまたまた公共インフラを積み上げていますし、民間のビルラッシュも止まりそうにありません。

 私の試算では、2040年の東京の経済規模は2010年対比76%程度に縮小するため、約4分の1のビルが老朽化したままメンテナンスされず、放置される恐れがあります。スラム化や治安の悪化による都市の崩壊を防ぐため、何らかの建築規制が必要でしょう。

>>後編『未曽有の人口減少がもたらす経済、年金、財政、インフラの「Xデー」(下)』に続きます。

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