親子で料理すれば、ますます楽しい

 「料理に時間がかかって子どもとすごす時間がない」と悩むお母さんもいます。
 こういう場合は、子どもに手伝ってもらってやるといいですね。一緒に料理をすると、お互いにさまざまに交流できます。

 ある雑誌で子どもと料理をする企画があり、小学生のお子さん2人と一緒に「にんじんの白和え」をつくったんです。にんじんの皮むきから始めたのですが、

 「もし、にんじんが自分だったら皮むき器でざっとむかれると痛いよね。
 だから、わたしは皮むき器を使わないで包丁でなるべく薄くていねいに皮をむくんだよ」

 と話すと、時間はかかりましたけれど、きちっとやりました。

 子どもは、こうしてきちんとやるからきれいにできるということがわかるのですね。
 そういうふうにすると、料理がどんどん好きになります。

 包丁を危ないといって使わせないお母さんもいますが、子どもの手に合う小さなナイフを用意してやれば大きなケガをすることはありません。
 それで失敗したとしても尊い経験になりますから、お母さんは危ないといってとりあげず、何でもやらせてみることですね。

 あるお父さんが講演会で「わたしの体験ですが……」と話してくれたことは、会社帰りにふと商店街の店先で七輪を見つけたんですって。

 それで、さっそく買って家に帰って、子どもと炭で火を起こすところから始めて、魚を焼いて食べたそうです。
 手間はかかったけれど、子どもと一緒にやって、それがとっても楽しくて、親子の絆が強まってよかったって。うれしそうに話してくださいました。

“いのちのうつしかえ”の体験を
子どもたちに

 いま、全国あちこちでおむすび講習会をやっていますが、おむすびを食べたことのない子がいます。買ったおむすびは食べたことがあるけれど、人が握ったものはないって。
 それで講習会で一生懸命握って覚えているんですね。それをうちに帰って家族のためにつくってあげたりして。体験を通して覚えたことが生活のすべてに入っていくわけです。

緑の野菜をゆがいたとき、これまで以上に緑が鮮やかな緑に変わる瞬間があります。

 このときに茎を切ってみると透き通っている。この透明になった瞬間が“いのちのうつしかえ”であり、このときに食べるのがいちばんおいしい。
 単純なことのようですが、こういったことも親子で体験してみると、子どものほうも何かを感じるわけです。

 わたしたちは食べないと生きていけません。教育というのは、常に食べることと一緒になって考えていくことが大事だと思うのです。
 そして食べることを通して、子どもさんと一緒に「透明」ということも考えてほしいのです。