「麻生氏は古色蒼然たる守旧派」と国内証券のエコノミストは、現時点で次期自民党総裁の最有力候補である麻生太郎幹事長の経済政策をバッサリと切り捨てる。

 「赤字国債を発行してでも景気対策を優先する」との麻生氏の発言は、効果が小さく財政赤字を拡大させただけの「1990年代の景気対策」を彷彿させる。

 麻生氏の経済政策は具体的にどんなものになるのか。これまでの発言などから、想定される施策をリストアップしてみよう。

 まず所得税減税。麻生氏は、定額減税を主張する公明党に大型補正予算編成で同意した。また、投資減税や住宅減税にも触れている。

 8月の幹事長就任後に打ち出したのが株式の配当金を300万円まで非課税とする証券優遇税制の拡充だった。このほか、基礎年金の全額税方式、地方分権を踏まえた道州制の導入を主張している。

 こう見ると確かに財政赤字を拡大させる方向のメニューが多い。2011年度に国家財政のプライマリーバランス(基礎収支)を黒字化させる目標を「先送りする」と訴えるのは当然のことといえる。

 もちろん、麻生氏のこうした政策が実現するかどうかは、総裁選並びにその後に予想される解散・総選挙の結果次第だ。それを察知してか、株価、金利、為替市場いずれも福田康夫首相の辞意表明以降大きな動きを見せていない。

 もし、これらが実現されるとなったら市場はどう動くか。赤字国債増発、財政収支悪化懸念から長期金利は上昇基調をたどると多くの市場関係者は見る。

 株価については、麻生氏が主張するように配当金非課税となればプラス要因になるのは確かだ。だが、その実現性は低い。配当金に対しては暫定的に現在10%の源泉課税となっているが、自民党税制調査会は昨年、11年から20%に戻すことで合意した。非課税は財務省が頑強に抵抗するのは間違いない。

 加えて、「一連の政策は外国人投資家から守旧派、反改革と取られるのは間違いない」(藤戸則弘・三菱UFJ証券シニア投資ストラテジスト)。外国人は昨年9月に、改革に熱心でないと彼らが判断した福田政権発足後、3月までで約3兆円の売り越しだった。今回も同様の動きを見せるに違いなく、株価は下落する公算が大きい。外国人売りとなれば、為替も円安となるだろう。

 外国人投資家や市場関係者が望むのは、やはり、小泉政権に代表される規制緩和など構造改革を進展させる政権である。その意味では“上げ潮派”の候補への期待度のほうが高い。

 自民党並びに政府が目先の選挙の票目当てに、派手さを競うだけの総裁選、バラマキ景気対策に走れば、必ず市場からしっぺ返しを食らうことになるだろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 竹田孝洋)