駅の公衆トイレで眠るのが美奈(仮名・18歳)の日課だ。
アルバイト先のキャバクラはラストが午前1時。すでに終電はないので、便座に腰かけてうとうとし、夜明けを待つ。電車が動き出せば、適当に化粧を落として制服に着替え、学校へ。睡眠不足と疲労で授業など頭に入るわけはないが、しかたがない。出席日数はもうギリギリなのだから――
今、こんな高校生たちが全国で増え続けている。4月から高校無償化が始まるが、それでも高校卒業の危機にさらされる子どもたちが、来年も大勢現れるかもしれない。
高校生の“卒業クライシス”の実態について、現場に聞いてみた。
「PTA会費で校舎を修繕」!?
授業料の倍かかる「学校納付金」
全教・日高教・全国私教連が設けた「授業料・教育費緊急ホットライン」。実施は2月11日のみだったが、この日だけで156件の問い合わせがあったという。日高教 小池由美子さんは説明する。
「私立高校の学費を滞納してしまったがどうすればいいか、といった声が多かったですね。私立だと1ヵ月5、6万円はかかるから、2、3ヵ月滞納しても結構な額になってしまう。払わずにいると、出席停止になったり、試験が受けられなくなったり。中には卒業証書がもらえなくなってしまうケースもあります」
このほか、「入学金が支払えなくて困っている」という相談も目立ったという。
高校無償化が実施されても、わが子に高校を卒業させてやれない――
そんな親が急増している。授業料以外に支払わねばならない費用があまりに多いからだ。
同組合の「2009 年度高校生の修学保障のための調査」によると、授業料を除いた初年度保護者負担金平均額は、全日制高校の場合、男子が20万5460 円、女子が21万945 円。授業料のおよそ2倍の額である。