2007年9月30日、金融商品取引法が全面施行され、金融商品の販売に際してはこれまで以上に懇切丁寧な説明が販売側に求められるようになった。

 これまでも金融機関は、顧客の知識・経験・財産の状況、リスク許容度を確認して金融商品を販売していたが、新法の制定により、顧客の投資目的に合致した金融商品を選択し、しかも、ただ説明すれば事足りるわけではなく、顧客が理解できる程度まで十分に丁寧な説明をしなければならなくなった。

 金融機関は顧客の理解が十分でないと判断すれば、金融商品を販売することはできない。もし理解が不十分なまま顧客に金融商品を販売した場合は、金融商品取引法違反となり、金融機関に対して行政処分や刑事罰・課徴金が課せられることとなった。

投資初心者は
店頭窓口を積極的に活用する

 そのためか最近、金融機関は販売側の説明不足を問われないよう、窓口での対応機会を極力減らし、投資家自身が情報を入手し投資判断を行うインターネット取引に誘導する傾向が見える。

 法律が施行された当初、店頭窓口では「説明が細かく説明時間が長すぎる」と投資家の不満の声が多く聞かれた。しかし、手続きに手間がかからないという理由から、投資に慣れていない人がいきなりインターネット取引を始めるというのも問題があるだろう。

 投資を始める際、分からないところを繰り返し聞ける助言者の存在はありがたいものだ。しかし、ほとんどの人が「お金のことで相談できる人がまわりにいない」というのが実情だ。金融機関の窓口に相談に行くという手段もあるが、金融機関の窓口では金融機関が売りたいものを押しつけられると警戒し、躊躇する人も多い。

 しかし金融商品取引法の施行により、金融機関は投資目的を無視した商品を提案することはできなくなった。投資家が説明を求めれば、理解できる程度まで丁寧に説明しなければならなくなった。これは投資家にとっては朗報であり、画期的な法律だろう。投資家の投資目的が明確であれば、意に反した金融商品を押し付けられる心配がなくなったのだから。投資家はこの法律を有効に使い、金融機関の窓口を大いに利用しよう。

 「金融機関の窓口に行ったら、金融機関の売りたい金融商品を売りつけられた」――。

 こういった残念な事例は投資家側にも問題があったと私は考える。

 「来月満期になる定期預金が100万円あります。どんな運用がよいでしょうか? 何かお勧めの投資信託ありませんか?」と、金融機関の窓口担当者の考えにゆだねる相談の仕方をしていなかっただろうか?