日経平均株価は、一時2万円を超えたが、大きな上昇をできないでいる。株価はなぜストレートに続伸しないのか?

 その基本的な理由は、株価が実体経済の動向を反映していないことだ。以下に見るように、ドル表示でさまざまな変数を見ると、このことがはっきり分かる。

ドル表示のGDPはこの数年で減少
日本経済の地位は低下した

 異次元金融緩和導入以降、企業の利益は増え、株価は上昇した。しかし、GDPは停滞している。前回見たように、売上高は停滞しているし、設備投資も増加しない。

 こうしたことは統計データを見れば分かるが、あまり印象に残らない。

 ところが、ドル表示で見ると、いろいろなことが違って見える。普段は分からないことが見え、物事の本質がそこから分かることもある。

 まず、GDPを見よう。ドル表示の日本の名目GDPの推移は、図表1に示すとおりだ。この図は、普段われわれが見ているGDPの推移とはかなり異なる形をしている。

 2012年がピークで、それ以降は大きく低下を続けているのである。14年の値は、12年に比べて22.5%も低下している。IMFによる15年の推計値は、29.3%の低下だ。この予測が実現すれば、日本のGDPは03年よりさらに低い水準へ逆戻りすることになる。

ドル建てでは利益減、しかし株価は上昇の不思議

 GDPがこの数年で2割も3割も減少していることは、日常生活では感じられない。国内のさまざまな経済変数が、ドル表示ではほぼ一様に低下しているからだ。つまり、日本国内では、大まかに言えば、ドル表示の賃金もドル表示の価格もほぼ同じ率だけ低下しているので、格別貧しくなったという意識は持てないのだ(ただし、詳しく見ると、実質賃金は低下している)。

 ドル表示のGDPがここ数年で大きく減少したことは、世界経済の中で日本経済の地位が著しく低下したことを意味する。例えば、1人当たりGDPで見た日本の順位は、かなり低下した。しかし、ここでは、そのことを見るのでなく、株価との関係を見ることとしよう。