「私の経営哲学の基本は“ワースト・ケースに備える”こと。戦国武将・武田信玄のように一生不敗で終わりたい」と豪語していた大島健伸・SFCG会長がついに白旗を掲げた。

 2月23日、同社は早朝6時30分の取締役会で民事再生法適用の申請を決定。3380億円の負債を抱え、今年最大の倒産に追い込まれた。バブル崩壊から現在に至るまでの約20年間、一度たりとも赤字に陥ったことはなかったが、最後は25日決済のわずか84億円の借入金返済の目途がつかなかった。

 大島会長がSFCG(旧・商工ファンド)を創業したのは1978年。小口事業者金融で急速に業績を伸ばしてきたが、過剰な取り立てが社会問題化し、次いで過払い金返還請求が殺到。貸金業法改正に伴う上限金利引き下げ(29.2%→15%ないし20%)も見越して、近年では不動産担保融資に傾斜していた。

 2005年7月期の不動産担保融資残高は650億円だったが、わずか3年間で2404億円にまで急増。営業貸付金残高4700億円(08年7月期)のじつに半分以上が不動産担保融資であり、すでにこちらが主力となっていた。つまり、過払い金問題よりも、昨今の不動産不況が同社の首を締めたといえる。

 国内金融機関が融資抑制に走るなかで、もっぱら外資系に資金調達を頼ってきたが(借入金1848億円のうちシティバンク銀行、バイエリッシュ ヒポ フェラインス銀行の2行だけで半分を占める)、サブプライム問題に端を発する世界金融危機で、刀折れ矢尽きたかたちだ。

 昨年来、経営危機が囁かれてきたSFCG問題の焦点は、再生の成否に移る。小口事業者金融のビジネスモデル、ノウハウは同社独特のものだが、過払い金返還リスクが読み切れず、企業イメージもよくない。民事再生法適用の申請に当たって個人資産保全対策を講じたといわれる大島会長の問題もある。

 かつ、借入金返済のために少なからぬ優良債権を売却してしまっている。たとえば日本振興銀行には、すでに800億円を超える債権を譲渡しており、社員まで移籍している。

 再生のスポンサーがそう簡単に決まるとは考えにくく、昨年、2558億円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請しながら最後は清算に追い込まれた新興不動産企業、アーバンコーポレイションと同じ轍を踏まないとも限らない。

 SFCGには約7万社の取引先があるという。これは地方銀行並みの数であり、その大半が銀行融資を受けられない中小・零細企業だ。スポンサー選定が難航すれば、今後はこうした中小・零細企業が窮地に陥る。SFCG倒産の余波は大きい。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  藤井 一 )