お年玉を管理するより、マーケットにふれさせよう

田端 マーケットに「さらされる」という言い方をするじゃないですか。これって、本当に外気にさらすような感覚だと思います。マーケットにさらされてないものは、新陳代謝が起こらず、カビが生えて腐る。でも、だからこそマーケットにふれたことがない人は、マーケットをこわがりますよね。大企業に新卒で入り、その会社で20年とか働いてきた人って、市場に出るのこわいんだろうなと。

ちきりん 特に、理系で就職も教授の紹介で決まった、なんて人だと、40歳くらいになっても、1回も市場に向き合った経験がない。それだと、組織から離れることや市場に向き合うことがホントに怖くなるでしょうね。

田端 それをダメだとか、意気地がないとか言う気はなくて、まあ自然な感情だろうな、とも思います。でも、交通事故がこわいからって家からずっと出なかったら、何もできないじゃないですか。早いうちからマーケットに適切にさらされるのは、ものすごく本人のためになるんですよね。

ちきりん アメリカだと、中高生のうちからベビーシッターや車洗いなどのアルバイトをしたりして、ある程度市場にさらされて育つんですよね。

田端 あと、レモネード売り(笑)。

ちきりん 定番ですね(笑)。しかもそれらの仕事も、日本みたいにアルバイト情報誌の求人広告に応募するんじゃなくて、自分でチラシをつくって、電話番号書いて電柱に貼ったりして、注文をとってくる。だから、どう書いたら仕事の依頼が来るのか、10代のうちから自分で考える。

田端 でも、日本の親は自分の子どもをマーケットにさらしたいと思っていないだろうなあ。

ちきりん そうなんです。だからこそ私は、書籍でもツイッターでも、小さいうちからマーケットに触れさせてあげてって、何度も言ってます。

田端 投資家の村上世彰さんが、小学校4年のときにお父さんから100万円渡されて「今後一切お金はあげないからこれで暮らせ」って言われた、というエピソードがありますよね。それを株で増やした村上さん自身もすごいですけど(笑)、一気に渡すしたお父さんはやっぱりすごいなと。親心だと、毎月3万円とか渡したくなっちゃうじゃないですか。

ちきりん 日本の親って、お年玉ですら管理しますもんね。うちの子はまだお金の使い方わかってないからって。

田端 ああ、僕も子どもがいるから、それうっかり言っちゃいそうだなって思います(笑)。

ちきりん 子どもがお年玉を全額無駄使いしたって、誰も何も困らないのにね(笑)。もしある子が、お年玉を早々にすべて使っちゃって、本当に欲しいものが出てきた時に買えなくて後悔したら、次の年からは別の使い方をしようとする。そこにはすごい学びがあるんです。もっと計画的に使おうとか、貯金しようとか、はたまたどうやったら増えるのか、と考え始める。その機会を親が奪っちゃうのはもったいないです。

田端 しかもいまって、LINEスタンプを売るとか、アプリを開発して公開するとか、インターネットのおかげで、子どものうちからマーケットにふれるチャンスがいろいろあるんですよね。

ちきりん そう、インターネットのおかげで誰でも供給側になれる。自分が使わなくなったおもちゃをヤフオクで売ってみる、とかもアリだと思います。

田端 でも子どもがネットサービスを使うってことを、こわがる親は多いですよね。LINEも、何か事件が起こるとやりとりに使われてただけで、ニュースで「LINEで知り合った」って書かれちゃうんですよ。

ちきりん あれ、ひどいですよね(笑)。振り込め詐欺の場合も「固定電話にかかってきた電話で騙された」って言えばいいのに。NTT回線の振り込め詐欺シェアって、すごく高いんじゃないかな。

田端 たしかに! 固定電話なくしたら、振り込め詐欺すごく減りそう(笑)。

ちきりん 親も学校の先生も、知らないものはこわいと感じるんですよね。だから、子どもにも勧めない。自分がまずやってみたらいい。教科書やセミナーではなく、市場から学べることってものすごくたくさんあるんです。

※この対談は全5回の連載です。 【第1回】 【第2回】 【第3回】 【第4回】 【第5回】